2012年1月14日(土)に公開された板尾創路第二弾監督作品『月光ノ仮面』。
映画の公開に先立ち1月9日にシネプレックス枚方にて先行上映会が行われ、板尾創路監督が枚方にやってきました!今回はその際のトークショーの模様をレポートします!(※ネタバレが含まれる部分はカットしてありますのでまだ観てない方も安心して御覧ください!)
(c)2011「月光ノ仮面」製作委員会
トークショーは板尾創路監督と映画評論家のミルクマン斉藤氏によって行われました。
ミルクマン斉藤(以下 斉藤) 板尾監督の第二弾映画「月光ノ仮面」、一足先にご覧いただきましたが感想はいかがだったでしょうか。本日はご存知の通り素敵なゲストをお招きしております。本作で監督・主演・脚本を務められた板尾創路監督です!
(板尾監督、登場)
斉藤 監督、枚方に現るということで。
斉藤 まず皆さんに一言お願いします。
監督 休みの貴重な時間に集まって頂きありがとうございます。枚方に来るってこともなかなかないので、すごく歓迎してもらって嬉しいです。短い時間ですがよろしくおねがいします。
斉藤 板尾監督の前作品「板尾創路の脱獄王」をご覧になった方も多いと思うんですが、どれぐらいご覧になっていますか?
(会場挙手)
斉藤 あー結構いらっしゃいます。映画好きなら「うーん」と唸らざるを得ないものがありましたが、今回も期待にたがわぬ作品で非常に作家性の強い、個性の強い板尾監督の映画でした。今回は落語家の話ですが、昔から落語には興味がおありになったんですか?
監督 そうですね、落語は基本的には好きです。大阪出身なので上方落語は日常的に知ってましたけど江戸の落語はあんまり馴染みがなくて、この映画を撮るにあたって勉強しました。
斉藤 あ、そうなんですか。最初から江戸落語を舞台にしようとするんじゃなくて、この企画ありきだったわけですね。
監督 そうです。江戸の落語かなっていう雰囲気があったので。
斉藤 雰囲気からすると上方のちょっともっちゃりした感じよりも…?
監督 そうですね、ちょっと粋な感じの落語のほうがあってるかと。
斉藤 今回は満月、冷たい色彩が素晴らしく、そういう月光のムードが漂っていましたが、モチーフは「粗忽長屋(そこつながや)」という、あんまり上方では演じられないけれども落語が好きなら誰でも知っているという非常にシュールなネタで、これらはどちらが先にあったんですか?
監督 まず脚本があって、せっかくなので古典落語が映画にリンクしてたほうが面白く作れるかなと思って古典落語を勉強してそこで粗忽長屋と巡り会って、これは世界観が似てるなと思って粗忽長屋にしました。だから粗忽長屋が「後」ということですね。
斉藤 前回の作品「脱獄王」と同じく今回も昭和初期~中期の作品ですし、47年、つまり戦争が終わって2年ぐらいの寄席の雰囲気とか雑然とした街の雰囲気が、美術やカメラ的にも色濃く出ていたと思うのですが、その辺の交渉は時間がかかりましたか?
監督 そうですね。古い映画を何本か見たり、美術さんと相談しながら当時の記録写真を色々見たりしていました。
斉藤 脱獄王とほとんど美術や照明、衣装さんは同じですよね。
監督 そうですね、主なスタッフさんはほぼ同じです。
斉藤 気心も…?
監督 そうですね。僕のだいたいやりたい感じや、時代も似ていて、この色合で時代を撮って欲しいとか。
斉藤 力入ってますよね。
監督 そんなに予算がないので、再現するのには割りと工夫をして、見えるところだけなんとかっていう感じになって、わりとカメラが引けなかったりして、頑張って頂いて…。
斉藤 カメラの動きとフォルムがあっていて、不自然さはないですよね。
監督 そうですね わりとこうギュッとした感じなんですけど、そんなどーんと引いて(撮る)っていうよりかは、狭い絵の方がこの映画にはあってるのかなと思います。
斉藤 女郎屋さんの後ろの蕎麦屋さんなんか、やけに豪華でしたよね。
監督 なかなか絵には苦労しました。でも工夫しながら少しでもいい感じに撮れるように協力していただけたのが嬉しかったですね。
斉藤 先ほどのお話にも少しあったんですが、監督演じられる記憶を失った男と、浅野忠信さん演じられる自分の商売道具である声を失った男、この二人の因果関係、一人の男の話のようであり、ひとつから分かれたような話であるような感じですけれど、そういう話を思いつかれ映画にしようとしたきっかけは?
監督 そうですね 芸人さんの話は撮りたいなと漠然とあって、でも漫才とかじゃなくって…漫才だと自分にあまりにも近いので落語かなというところからきて、またそういう時代が好きなので、どうしても戦争が背景にあって、そこに落語家が帰ってくるという始まりは物語としてワクワクするなというところからですね。
斉藤 今回は浅野忠信さん、石原さとみさん、前田吟さん、どなたも初めてですか?
監督 そうです。初めてです。
斉藤 この方々とは今回どうでしたか?
監督 浅野君については脚本の段階でも最初にイメージしたのが浅野君で、石原さんと前田さんはイメージは当然なんですが、それ以上によかったと思いますし、「最初から決まってたのかな」という感じです。
斉藤 運命的という。
監督 そうですね。
斉藤 別人だとわかってからの石原さんのリアクション最高ですね。
監督 そうですね、彼女は難しい役どころで、台本とか僕の説明ではなかなか役どころを掴むのが難しかったのですが、戸惑いながらも一生懸命やっていただいたので、いい意味で勘違いしながらやっていってもらったのがよかった気がします。
斉藤 板尾さんが現れて周りの粗忽の濃度が濃くなっていくのが面白かったわけですが、それでは今日監督に来て頂いたまたとない機会ですので、皆様のご質問をお聞きしていきたいと思います。
(質問のあるお客さんが挙手)
お客さん エンディングテーマの「非情のライセンス」が非常に良かったと思います。最高でした。なぜあれを選ばれたんですか?
監督 僕が小学生ぐらいのときに「キーハンター」っていうドラマがあって、僕も年代ではないもののキーハンターのテーマがすごい好きで、今回この映画の脚本を作りだしてなぜかすぐに曲のイメージがきたのでぜひ使いたいなとずっと思っていて。実は歌詞があって、それは野際陽子さんが歌っていらっしゃって雰囲気が違うんですけど、今回はスカっぽくアレンジしたバージョンです。野際陽子さんの方はスパイっぽい感じで恋の歌といいますか、好き同士だけど明日はまた敵同士みたいな歌です。そういう三角関係がちょうど映画と合っていて、僕のなかでしっくり来ました。
お客さん ラストシーンは色んな受けとめ方が出来るような最後だったのですが、なぜあのような形だったのかなと。ああいう風にしようと考えた背景は?
監督 実は最後のシーンは、まずあそこの映像が思い浮かんで、そこに持っていく為にどういうストーリーがいいのかなと逆から考えていって、僕は芸人なので僕の中ではラストはああいう表現になってますが、僕の演じた男が「粗忽長屋」を演じてお客さんが大爆笑してるっていうイメージのつもりで映像にしたって感じです。
斉藤 芸人としてのエクスタシーですね。
監督 そうですね。
(次の質問へ)
お客さん 遊女の人とトンネルを掘ってたその意味は?
監督 全くほったらかしのような感じでしたよね(笑) 実はですね、ひとつは満月がずっと欠けずに出てるという設定なので、月の光の届かないところをひとつ作りたかったんです。戦場の防空壕も月の光が当たらないので、そこは月の魔力の影響をうけてないという所がちゃんとあって、それと同時に地上の世界の不思議な話も進んでいるという風にしたかったんです。でも最終的にあそこに何か穴掘りの結末をハッキリつけるのが気持ち悪かったのでああいう表現にしました。あのへんは色々悩みました。
(次の質問へ)
お客さん 今日は子どもと一緒にきたんですけど、子どものコメントが一言「わからへーん」でした。こんな子どもにも何か一言お願いします。
監督 ご両親の育て方が良かったんじゃないですかね(笑) これで面白いといったらちょっと心配になるので、それでよかったんじゃないですかね。この映画について語り出したら恐ろしいので(笑)
斉藤 という訳でまだまだお話をお聞きしたい所でしたが、最後に板尾監督、お集まりの皆様に一言。
監督 貴重な時間の中、僕の映画のために集まって頂いて本当にありがとうございます。よかったらツイッターとかで宣伝していただいて(笑)、少しでも沢山の方に見て頂きたいなと。スタッフもキャストも同じ思いですので宣伝していただけるとありがたいです。短い時間でしたがどうもありがとうございました!