有名雑誌の編集長と考える枚方を盛り上げる方法とは?「地域の編集術」を聞いてきた【ひらつーレポ】

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イベントなどに実際に参加してご紹介する【ひらつーレポ


少し前になりますが今回は2月4日(土)13:00〜16:00に開催された、月刊雑誌『ソトコト』の指出(さしで)編集長による出版記念トークライブ「地域を編集するってどういうこと?」を取材させていただいたので、一部を抜粋してご紹介します!
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(会場の様子)

第1部は指出さんによるトークライブ、第2部は指出さんとゲスト2名(うち1人はひらつーを代表して参加したカトゥー@ひらつー)を交えてのトークセッション形式で開催されました。

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開催場所は、枚方T-SITE4階蔦屋書店のイベントスペース。

こちらが編集長の指出さん。笑顔がすてき。
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指出一正(さしで かずまさ)さんってどんな人?

月刊『ソトコト』編集長。1969年群馬県生まれ。上智大学法学部国際関係法学科卒業。雑誌『Outdoor』編集部、『Rod and Reel』編集長を経て、現職。
島根県「しまコトアカデミー」、奈良県「奥大和アカデミー」メイン講師、高知県文化広報誌『とさぶし』編集員ほか を務めるなど地域のプロジェクトに多く関わる。著書に「ぼくらは地方で幸せを見つける」。趣味はフライフィッシング。

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「ソトコト」ってどんな雑誌?

月刊『ソトコト』は、ロハスピープルのための快適生活マガジン。地球と仲良くし、楽しく生きていくためのライフスタイルを探り、提案していくことをコンセプトに、1999年世界初の「環境ファッションマガジン」として創刊。
「SOTOKOTO」とは、アフリカのバンツー族のことばで「木の下」という意味。『ソトコト』というもうひとつの木陰で、地球環境や私たちの暮らしについて議論しあい、未来につながるいい知恵を生み出そう。そして、それを愉快に伝えていきたい。そんな想いが込められているそう。
詳しくは公式サイト
■ 1999年創刊・毎月5日発売・約10万部発行

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(第2部に登場するゲストの2人:左・「奈良ひとり観光協会」の安達えみさん、右・枚方つーしんのカトゥー@ひらつー)

今回のイベントのテーマ

地方都市で社会をよりよくするために活動する「ローカル&ソーシャル」な働き方が注目されています。第1部では全国各地を取材した指出さんが様々な事例を紹介しながら、これからの働き方について熱く語ります。第2部では関西のローカルで活動している2名をゲストに、指出さんと関西・そして枚方を盛り上げる方法を一緒に考えます。


はじめまして
第1部 指出編集長のトークライブ

指出さん:みなさん、こんにちは。「ソトコト」という雑誌の編集部の指出といいます。
今日は土曜日の天気のいい日にお越しいただきましてありがとうございます。
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枚方には初めて伺ったんですけれど、僕は人口規模では同じくらいのまちで生まれ育って、東京に出てきました。だからなんとなく親近感を感じています。

『あたらしい地方』を編集・発信するソーシャルな視点

今日のテーマ「あたらしい地方を編集・発信するソーシャルの視点」というのを『地域×編集』の視点から持ってきました。

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今日は「あたらしい地方」と「ソーシャル」という言葉をぜひ覚えて帰ってください。

僕は去年の夏に『ぼくらは地方で幸せを見つける』という本をポプラ新書から出しましたが、その中の大きな要点はこの2つなんですね。

枚方はまさにその「あたらしい地方」なんじゃないかなと思うんです。

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僕自身は東京で仕事してるんですけど、東京のいろんな話題のお店を友人に教えてもらって行ったこともあったんですが、最近ぱったり行かなくなりました。

なんでかって言うと、例えばクラフトビールのおいしいお店があったりしますが、よくよく考えてみたらこれは東京で生まれたものではなくて、東京でアレンジされたお店かなって思ってしまうんですね。おいしいクラフトビール、でもポートランドに行ったらもっとおいしいお店あるよなとか思ってしまうんです。
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一方で、去年関わっていた高知県の四万十川の上流の町に行くと、昼日中から眼下に四万十川を眺めながらその土地でとれたおっきな栗のモンブランを食べて、それから四万十川主流のすごくいいお水で丁寧に淹れられたコーヒーを飲むんですね。

地元に移住してきた若い人達とか、まちづくりをやっている先輩、そういう人達とテーブルを囲んで、地元の食材でおしゃれでかっこよくおいしいものを食べながら、未来の話ができる。

これって東京で「1時間いくら」みたいな形でお客さんの回転を考えてるお店ではなかなか得られない経験なんですよ。これは東京と言う土地の底力が生み出している空間であり体験なんですよね。

そういったものが例えば、大阪にはある、枚方にはある、松山にはあるという風に見つけていくと実はこれまで東京が圧倒的な強さで『東京 対 地方』『都市 対 地方』と言われてきましたが、地方に大きな存在感が生まれてくるんです。

それが「あたらしい地方」と僕が呼んでいる場所です。

読めないまちはまだ発見されてない!?

「あたらしい地方」のおもしろいところは、結構漢字が読めないとこが多いんですよね。

『枚方』ってなかなか読めないですよね。例えば「三次(みよし)」っていう町があったり「神石高原(じんせきこうげん)」って町があるんですけど、読めないんですよ。でも読めないからこそ発見されてないんですよね。

読めるまちは発見しやすいんです。「京都」とか「鎌倉」ってみんな知ってる。
『大文字の地方都市』と僕は呼びますが、大文字のまちに行くのとはまったく違う価値観で、最近小さな『小文字の町』の魅力を見つける人達が増えてきたなと思います。

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それから「ソーシャル」の話もしておきましょう。

「ソーシャル」っていうのは、社会をより良く変えていくとか、未来をおもしろくしていく仕組みやものごとのことを、僕たちはそう呼んでいます。

ソーシャルグッドとかソーシャルビジネスとかソーシャルベンチャーとか、そういった言葉で使うときの「ソーシャル」はすべからくこういう視点で言われてますね。

「地域」と言ったときにそんなにキャッチーさはないかもしれないんですけども、こういう風にみなさんが興味を持って来てくださるということは、このイベントそのものが実はただのイベントやワークショップではなくて、ソーシャルデザインだったりするんですよね。
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地域のことをみんなで考えて共有して持ち帰るってのはとても大事なことです。

持ち帰る行為っていうのは何が起きるかっていうと、個人のみなさんが今日得たことをいろいろ自分なりに解釈する、そうするとバリエーションが広がるんですよね。

あ、じゃあカフェでそういうことを自分でもやってみようかなとか、自分のFacebookでまとめ文章を書いてみようかなとか、これみんなソーシャルデザインです。こうやって地域に関わるとか社会に関わる方法のことを「ソーシャル」という言葉でまとめているのが、今の僕がお伝えしたい言葉ですね。

指出さんはもともと釣り雑誌編集者

僕は1969年に群馬県高崎市という場所で生まれました。
群馬県、聞いたことあるけど栃木と群馬と茨城どこが真ん中でどこが右でどこが左だろう、なかなかわからないですよね。

僕は今こうやって「ソトコト」とかなんか地方のことをさもすごく理解してるように本を書いてるんですけども、もともと釣り雑誌の編集者なんです。

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大学時代は『Outdoor』っていう雑誌編集部でアルバイトしてました。毎日砂運びとテントを張る仕事ばっかりやってましたね。

そういうのをやりながら知らず知らずのうちに、釣りが好きで入ったアウトドア系の出版社だったんですけども、川にいる魚が傷んでいることに気が付いたんです。なんで傷んでいるか、これはいろんな理由があるんですけども、例えばキャッチアンドリリースを繰り返して精神的に参ってる魚がいたりするんです。

そこで、ただ釣りの楽しさを伝える編集者じゃなくて何かをやらなきゃいけないんだろうと思って、13年前に雑誌『ソトコト』に移りました。

(▽続いて、たくさんの全国の事例のお話を心を込めてご紹介いただきました。全部ご紹介したいのですが、長さの関係で一部を抜粋してご紹介します!)

地元の人が地元をおもしろがるための広報誌

 

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それから、高知県の文化広報誌の編集委員もやっています。
これは「とさぶし」というやつなんですけどね、2012年から出してます。

僕自身は県外編集委員なので、実際に取材をして原稿を書くのは地元に住んでいるそれこそ小さな出版社の女性の方とか、フリーデザイナーさんとかなんですけども、この「とさぶし」はたくさんあるローカルメディアの中で、1つ編集方法が変わっています。
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何かというと、最初にこれを立ち上げるときに「高知県といえば◯◯」っていうのを全部捨てましょうって言ったんですね。

みなさん「高知県といえば?」と言ったら出てきますよね、かつおのたたきとか竜馬像とか桂浜とか。その上から10を全部はずして、もう手足を縛った状態で高知を発信する特集を作りましょうって作ったんです。
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枚方の友好都市、四万十市がある高知県で枚方との共通点探してきた!高知の牧野はとんでもなかった【ひらつー番外編】より)

例えば、『特集うつぼ』。なかなかうつぼの特集作んないですよね。
うつぼの特集のときはページを開いてみるといきなりイラストでですね、太くて大きなうつぼが目を回しながら洗濯機の中でぐるぐる回ってるんです。

これ当たり前なんですね、高知だと。なぜかというと、うつぼのたたきは最高のごちそう、うつぼのヌルを取るためには洗濯機でヌルを取った方が早いんです。そういうのをイラストにしてみました。

それから高知のスーパーマーケットっていう特集も作りました。一体誰が読むんだろうって、地味ですよね。開くといきなり鮮魚担当のおじさんとかが「私の陳列方法」とかやってるんですよね。売れる陳列方法とかですね。

ところがこれはもともと、よくある「うちは本当におもしろいから遊びに来てよ」っていう『外向き』作戦のメディアじゃなったんです。

それよりも地元で自信をなくしている「やっぱ大阪出てきたほうがおもしろいよな」「東京に行った方がいいかな」とか言っている若い人達、それから20代・30代・40代の働き盛りの人達が、『高知っていうのはおもしろい』って思ってもらうために、地元の人が地元をおもしろがるためにこのメディアを作ったんですね。
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すると何が起きたかというと、編集委員になりたい人が殺到したんですね。

それこそスーパーマーケットを特集した後には、お惣菜係の担当の男の子が自分も編集委員にならせてくださいって連絡をくれました。どうぞどうぞ、是非やってください。
小さなNPOの図書館司書をやっていた女性の方から、自分も編集委員になりたいですって連絡もらいました。もちろんです、是非やってください。
これはみなさんのメディアですから。
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外部の僕達が何かをするためのものじゃないので、自分たちのことを自分たちで魅力を発信して、中がおもしろがるようになってくると、外の人達が高知うらやましいな、なんかおもしろいことやってるなって言って仲間になってくれるんです。

そうやって外にないものねだりで仲間を求める前に「高知県内でおもしろいことを見つけて高知県内の人がおもしろがるメディアにしましょうよ」ということでこうなりました。

今は17号が出てますね。

編集会議とかすごいんですよ。1月に行ってきたんですけどね、路面電車を借り切ってそこに20人ぐらい編集委員が乗って日本酒とビールとか用意してあってもう飲み放題の状態で編集会議が始まるんです。もう最初から飲んでるんでほとんど編集会議にならないですよね(笑)

こうやって「とさぶし」は作られています。

会って熱量をちゃんと伝える

これは僕が出させてもらった『ぼくらは地方で幸せを見つける』という本です。
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(イベント後にサイン会も行われました)

ほんとに読み込んでくれる方が多くて、いつもイベント会場に付箋がたくさん貼ってあってマーカーがびっしりのやつ持ってきてくれるんです。ここまで読んでいただけるとうれしいなっていうぐらい。

地域のことを僕自身がこうだろうとかそうだろうとかっていう推測ではなくて、実際に去年1年間で92ヶ所でトークイベントをやってきてるんですよ。

僕自身を貸し出す『レンタル編集長』ってのを去年の1月から1年間やってきて、もう週2回くらいしか東京にいないんですね。昨日は東京に唯一いたんですけど、おとといは京都にいました。その前は静岡の清水にいましたね。

こうやってなるべく地域・地方で自分たちのまちづくりをしてる人達に会って、その熱量をちゃんと伝えないとそれは編集者としてうそだろうなって思ってまとめた本です。

徹底的に使い続けることが大事

僕は2011年の6月からソトコトという雑誌の編集長になりました。
それまでは副編集長だったんですね。
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今ソトコトは意識的に「地域」とか「みんな」とか「つながる」って言葉を、まだその言葉使うんですかって言われながらも使ってます。

徹底的に使い続けることが大事なんですね。

自分が思っている以上に届いてないことをよくわかっているので、だから『人と人とがつながることが大事ですよ』って何度でも言います。

もうわかっている人にとってはいつも言ってるよなっていう風に思われがちなんですけども、続けて伝えることで自分と距離が遠かった人達が仲間になってくれるので、それをソトコトはこの5年間続けています。

『編集』は誰にでも出来る!?
「地域×編集」っていうテーマでトークイベントをやると、東京だと立ち見が出るくらいたくさんの方が来てくれます。

地域と編集がなぜこんなに相性がいいのかなと思ってよく考えてみた結果、デザインはスキルが必要な部分が多分にあるんですけど、編集は誰でもできるんですよね。

どんな人でも編集って仕事を、自分の日常生活の中で生み出すことができる。
考え方としてやりやすいんですよ。

これから必要とされるのは、
『関係』案内所?

ここで1つ言葉を発信させてください。
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僕、最近よく駅前にある観光案内所ってのがもうあまり機能を果たしてないんじゃないかなって思うんです。それはなぜか。みんなスマートフォンで情報が手に入りますよね。

それよりは例えば、自分が紹介したい人がいたら紹介するとか・・・つまり観光案内所よりもこれからは関係を案内する『関係案内所』が必要なんじゃないかなと思うんです。

関係案内所は公の場所であってもいいし、ここ枚方T-SITEさんみたいなところでもいいし、それこそちっちゃなカフェでもいい。僕たちはたぶんお金を払って何がほしいかというと、『関係』なんですよね。

関わることの楽しさ、関わることで時代が前に行くことのおもしろさに気づいた人が本当に増えました。
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それは例えば100万円出して100万円の対価の物を買って、それをみんながいいねって言う時代が終わったのかもしれないですよね。

それよりも100万円あったらその中でほんの僅かでもいいからクラウドファンディングにまわすとか、ちょっとじゃあ5時間くらい遠いけども島根のあるカフェに行ってその場所に行って経験を楽しむとか。

ただ単にそのお金そのものの価値観を、そのお金の数字が移動したものを手に入れる時代じゃなくて、そういう金額では計り知れない関係性をどう自分たちで手に入れるか。

そのための一つの手段としてお金を払うっていうのはあってもいいかな、くらいにお金を払う順番が1番手から5番手くらいに落ちちゃったんじゃないかな、っていうのが僕の考えです。

つながりやすいまちとつながりにくいまちの違い 

次は島根県の江津市(ごうつし)って場所の話なんですけども、島根県の江津市に行かれたことのある方はどのくらいいらっしゃいますか?
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蔵庭』という場所が、江津市にあります。江津はかつて、すごくおもしろい記述で小学校の教科書に載っていたんですね。何かというと、「東京から一番遠い町」という記述でした。

東京から一番遠い町って書かれたのが江津の人達の中ではすごく記憶に残ってるんですけども、人口は決して多いわけではありません。僕の中ではこんなに人がいる場所はめずらしいなっていう風に思わせてくれるような不思議な現象が起きています。

蔵庭』とは、八王子から移住してきたご夫妻と隣の浜田から移住してきた女性の3人がつくった、カフェアンドベーカリーです。

そのきっかけがおもしろくて、ご夫婦の奥さまは元々マクロビオティックの師範、旦那さんは映像やイベントを組むのがすごく上手な人でした。奥さまが浜田出身で、たまたま隣町の江津に来たら、その日のうちに江津のまちづくりをしてる人が、どんどんどんどん、人が人を紹介してくれて、50人くらいの人がFacebookでつながってしまったそうなんですね。

行ったことも来たことも今までない土地なのに、突然こんなにみんなが自分たちのことを気にしてくれるまちはなんなんだろう?と思って、それがおもしろくて江津で物件を探すようになりました。

これほんとに温度差はあります。いろんなまちがあるんですけども、「人がつながりやすいまち」と「人がつながりづらいまち」は単に気候風土とか人間性とかだけじゃなく、「何か」があるんです。
それに僕は気が付きました。
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「何か」というと、『自分の土地のことを自分事として考えている人の数』なんですよね。

自分の土地・自分のまちのことをどうにかしないといけないなとか、自分のまちがこうなってほしいなっていう風に、その土地に住んでる自分という存在をちゃんと認識している人が少なかったら、そこは単なるホテルと変わんないですよね。

だから人口が2万人でも1日に50人の人を紹介してくれるこのまちはたぶん『どこよりも人がいるまち』なんですよ。このまちのことをすごく感じてくれる人がいることが、実は地方にとって幸せなことなんです。

実はこれ、裏があります。
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なんでこんな風通しのいいことが生まれてるかというと、江津は地域、地方都市としてはめずらしく長い間毎年ビジネスプランコンテストをやってるんです。

ここから新しくゲストハウスが生まれたりとかコミュニティスペースが生まれたりクラフトビール作りが始まったりとか、ビジネスプランコンテストから人間関係がさらにバージョンアップする、そういうのを意識的に行政がやってるめずらしいまちなんですね。

どんなにスーパー大ヒットのプランが出なくてもやめてないっていうのがこの江津の偉さかなと思います。

指出さんは取材対象者を何で選んでるか?
それは・・・

僕は取材対象者を何で選んでるかというと、単に名前ですね。

先ほどご紹介した「ぼくらは地方で幸せを見つける」でも紹介している「シマントモリモリ団」とか「パーリー建築」とか「ペンターン女子」とか「桃色ウサヒ」とか名前がおもしろいじゃないですか。

名前がおもしろいってのは編集者なんですよ。
自分のことをどう編集してみせられるかがわかってる人達。
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本当にいいことやってるんだけども、「なんとかを考える会」とかよくあるじゃないですか。
それは一昔前はその名前で良かったんですが、今新しく仲間を増やすにはやっぱ「おもしろい」ってのがど真ん中にないと、文化も経済もやっぱり人が集まらないんです。

はい、じゃあここで1回終わりにしたいと思います。 

− 休憩を挟んで・・・

第2部 指出さん・安達さん・加藤3人のトーク
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指出さん(以下、指):では、第2部を始めたいと思います。
まず、奈良県「奈良ひとり観光協会」の安達えみさんですね。よろしくお願いします。

安達さん(以下、安):よろしくお願いします。

:それからローカルオブローカルですね、「枚方つーしん」の加藤航さんですね。よろしくお願いします。

加藤(以下、加):よろしくお願いいたします。
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:どうぞどうぞご着席ください。カフェ形式でいこうと思います、ここからは。僕も2人のプロフィールとそれから枚方つーしんさんも安達さんのご活躍も実は勝手ながら気にしていたんですよ。

だから今回お会いできるのすごく楽しみにしていました。でもお二人は、圧倒的になんかで社会を変えようとしてるわけじゃないと思うんですよ。

それよりもちょっとクスッと笑えたり、少しなんか日常の中でみんなが幸せになるようなことができたらな、みたいなそんなやさしい気持ちでやってるプロジェクトなんじゃないかなと思ってます。

ゲストの自己紹介

最初はみんなでベースを共有しようと思うので、安達さんから自己紹介お願いします。

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:はい、わかりました。私、安達えみと申します。

私はもともと仏様、仏像とかが好きだったものですからなんとか仏像をかわいく紹介できないかなと思って自分で作ったキャラクターと屋号「塗仏商店(ぬりぼとけしょうてん)」で、Facebookもやっております。
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:私は1983年生まれで元々は静岡県の浜松市出身です。
大学から東京に行き、東京のアニメ会社に入りました。

仕事の中でアニメだけじゃなく、なぜか鳥取県のまちおこしをやることになりまして、映画祭の立ち上げから運営とか広報宣伝もろもろ・・・とにかく手探りで4年ぐらいやっておりましたが、その後退社することになり、一旦無職になりました。

ハローワークに行きつつ、どうしようっていうときにたまたま知り合いから大阪の大学のアルバイトの仕事を紹介され、大好きな奈良が近いって理由だけでなんとなく関西に引っ越してきました。

その後2015年から「ホトケ女子」というこれまた怪しい名前で活動しています。
いろいろデザインやイベントの仕事をしているんですが、おまえ結局何屋なんだって話をよくされるのでその時に使ってるのがこの「奈良ひとり観光協会」っていうキャッチコピーで自分のことを表しています。
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観光協会の仕事っていろいろあると思うんですよね。
イベント企画運営、それを宣伝、チラシ、ホームページ…、あと今日もそうですけどトークイベントをする人を呼んだり、最終的に来てもらうだけじゃなくて何かグッズ販売をしてお金を落としてもらうとか。

そういうのを観光協会の人はいろいろ考えてやってると思うんですが、それを全部ひとりでやってしまおうというのが私の仕事です。
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こちらのパンフレットなどを作ったときは、デザインするだけで終わらせるのではなくてそこから派生してトークイベントとか観光ガイドをつけております。この枚方T-SITEでも「ホトケ女子が語る!仏像ナイト」というイベントを毎月しております。

あとは来年度からスタートしようと思っておりますけども、奈良のお寺さんを集めて奈良六観音花絵巻という新しい巡礼のデザインや、平城京跡のパンフレットを作ったりイラストを描いたり、あとはイベント関係やガイドもいくつかやってまして、来年もいくつか奈良県内でいろいろやろうかなと思っております。だいたいこんな感じです。

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:はい、安達さんありがとうございます。
掘っていくとどんどんおもしろい話が出てきそうですよね。僕はたぶん安達さんがやってる活動は『編集』だと思うんですよ。

今日はメディアの新しいありようみたいな話もできたらと思うんですが、雑誌を作るとか本を作るとかだけじゃないことが、今編集者に求められる時代になっています。

一時、編集者っていらないんじゃないかって僕も思ったんですけど、それが今編集者ってすごいでしょ。仕事として引く手あまた。それも2人と話を進めていきたいと思います。

では続いて加藤さん、よろしくお願いします。
僕は枚方つーしんさんの記事読んできましたよ。こんなに細かい情報を載せてたのかって思いました。
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:ありがとうございます。枚方つーしんのライターの加藤と申します。ちなみに枚方つーしんご存知という方いらっしゃいましたら挙手を…あ、多いですねー。

:枚方つーしんさんファンですね、みなさんね。

:思った以上に(笑)

枚方つーしんは枚方の地元ならではのローカルニュースを毎日6,7本ぐらい更新している、ブログ形式のインターネットのサイトです。

月間平均が200万ページビューの地域情報サイトで、枚方市民が約40万人おりますのでなかなかたくさんの方に見てもらえているのかなと。
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枚方つーしんは元々何から始まったかといいますと、個人のブログから始まっております。なぜ始めたかというと、地元が枚方の元編集長が枚方の情報が集まってるインターネットのサイトがないということでじゃあ自分で作ろかと、そういうスタートです。

今は法人化してスタッフも15名おります。枚方市民であるライターが枚方市民目線で作るというところが枚方つーしんの一番の特徴かなと思っております。

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:加藤さんありがとうございます。加藤さんはどんな記事担当なんですか?

:私は基本的には広告記事を担当してまして、枚方市内の企業さんといろいろやり取りして読者の人にどう届けたらおもしろいかなという広告を作っております。

『内向きの発信』『横向きの発信』『前向きの発信』

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:さて第2部は『関西で地元を編集する』っていうテーマで話していこうと思うんです。

なので編集について広く聞いていこうと思うんですけども、1部で僕がお話させてもらったものは、僕の中では、要は地域をうまく編集してその魅力を発信できてる人達だと感じてるんですが、何か印象に残ったところとかありますか?

:「つながる」という言葉を使い続けておられるというところが一番ぐっときたというか、そこがこれから私たち枚方つーしんにとっても大事になってくるところじゃないかなと思いました。

:ありがとうございます。安達さんどうですか?

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:前半の方に出ていた話だと思うんですけれども、『地元の方が地元をおもしろがれるようなものを作る』っていうのがすごく印象的でした。

私もそれはよく思っていて、まぁおもしろがるまでいかなくても地元の人がその地元のことを好きである土地っていうのは、ものすごく魅力的だなと思います。

私でいうと奈良ですけど奈良の人が奈良のことを好きになってもらって、その自分のとこが好きだよっていう気持ちが外に漏れ出すぐらいの気持ちの変化みたいなものが作れたらなというのは思いました。
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:ありがとうございます。正直、今は雑誌だけで売り上げ立てるの厳しいんですよ。

じゃあどうやってるかというと、島根県さんとか広島県さんとか高知県さんとかいろんな事業を一緒にやっていて単にタイアップの記事を作るとかじゃなくて、実際そのまちの魅力をどう伝えるかとかあとそのまちに魅力を伝えられる人材をどう連れてくるかとか人材育成講座のメイン講師とかもやってるんですね。

いろんな編集の方法があると思うんですけども、絶えず言ってることの1つとしてはこれは一番大きなくくりで言うと『内向きの発信』と『横向きの発信』と『前向きの発信』の3つに分けて僕は語るんです。

みなさん今、地域のこととか地方創生とかでいろんな地域がYouTube流したりローカルメディアを作ったりしてますけども、僕から見るとだいたいはみんな『横向き』なんですよね。

『横向き』って何か。まずこれから説明しましょうかね。
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これは簡単に言うと、高知のだいたいのメディアは『横向き』なので『とさぶし』という『内向き』のメディアを作ることにした。という風に文章を書くとして、『横向き』とはどこ向いてるか。

簡単です。
香川県、徳島県、愛媛県、大阪、東京など。

要は、牽制球を投げてる発信方向が多いんですよね。地域ってのは実は身も蓋もない話をすると、うちはおいしい俵百選に選ばれてる俵があるから米がおいしいとか、何より人が温かいんですってよくどこに行っても聞くんですけど、結局どこも同じなんですよね。

別にどこが優位性を保ってるなんて全くない。その中でとなりがうどんで売ってるから高知はカツオでいこうとかこれ『横向き』の視点で、編集を考える人の中ではまずこれをやめることが大事だなとというのが僕の中ではあります。
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もう一個は、『前向き』にいこうとかこういう人を狙っていこうっていうのも僕の中では△。

これは要は想定でしかなくて、本当にその人達を知らないでそれに向けてものを作ると痛い目に合うということですね。たぶん自分たちの所に来る人達はこういう人達が多いだろうからっていう「予想×予想×予想」の全く実体の見えない人に向けて作る前向きほどあてにならないものはない。

だから『内向き』に作ることが大事というのが、僕の中で1つ着地したことですかね。

要は実は背伸びしなくていいものづくり、編集ですよね。
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自分が何か特集を作るときとか記事や情報を発信するときに最初に思い浮かべるべきは、自分の友達の中で誰がこれをウケてくれるかなってことから考える。

そうするとこれは決して大人数には届かないかもしれないけれども、少なくとも自分が知っている人に向けて作るから、解像度が上がった編集になるんですね。

枚方つーしんさんにしても「奈良ひとり観光協会」の安達さんにしても僕の中では『内向き』加減がすごくいいなという風に思いました。

枚方の社会課題って何?

 

:じゃあまず枚方をモデルケースとしましょうね。
枚方って人口40万人くらいでものすごく際立った個性があったり人を引きつけるすごくメジャーな力があるものはありますか?

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:そうですね、まぁでもひらかたパークという老舗の遊園地がありまして、そこですと関西でだいたいの方がご存知なのかなと。それこそここ枚方T-SITEもそうですがTSUTAYA創業者の増田社長が枚方出身であったりとかそういったことぐらいですかね。

:ありがとうございます。
あとそもそもなんですけども、今日来てくださったみなさんはそれぞれ例えば「自分の地元のことが好きで地元をみんなに知ってもらいたい」とか「地域に関わってくれる人が増えたらいいな」とかっていう気持ちが強いんでしょうか?

強い?
うなずいてる人もいますね。笑ってる人もいますしね。

だからたぶん、「自分の地元がもうちょっと元気になってくれたらいいな」とか「他の地域に比べたら少しマイナーだな」とかってことに若干負い目とかコンプレックスを感じてるとかっていうのがあるのかなってのはありますね。

これはだいたい東京以外の人はみんなそうなので気にしなくていいと思います。
じゃあそういったところの話もしていくといいかもしれないですね。

枚方ってなんか困ってることとかあるんですか?
社会課題を解決しなきゃいけないとか、全体の人口が減ってて止まらないとか商店街がさびれてるとか・・・

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:うーんまぁ…枚方市役所の方に聞けばたくさん出てくるかと思うんですが、枚方に住んでる一市民としてはちょうどええという…。

例えば、お店が閉店してもまた同じ場所に新しい建物が立ったり、枚方T-SITEができたり、新しいニュースもあって、正直あんまり困ってないですね。

まぁ細かく困ってることって言い出したらキリがないんですけど、私たちは枚方というまちを編集しててニュースに事欠かないっていうのがすごい強みでありますし、なんでやろうとも思うんですけど枚方はやっぱり枚方が好きな方がほんとに多い、地元愛の強い方が多いっていうのは記事を作ってて思うところですね。

ソトコト-82

:よくあることに、人口40万から50万くらいの大きなまちの郊外の都市の人達は、困ってないことが困り事感ってのが強いですね。

:あー、そうかもしれないですね。

:別に困る必要はないんですけど地域の課題を見つけるっていうことをいきなり振られたときに困ってないからな、ってのが唯一の困り事で、そうなるとそれでもう終わっちゃうんですよね。

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:確かに(笑)

伝えたい人に伝えるための自分の必殺技

:我々もいろんなまちの変化を記事にして出してるんですけども、情報を届けると言う点でタイトルの付け方にはちょっとこだわっています。

例えば「あそこにコンビニがオープンしてる」とか「あそこの道路が広くなったみたい」とか、いわゆる会話の中で出てくる雑談のような形で届けるようにしています。

自分に言われてることだよっていう、まちの人がまちの人に対して伝えてるっていうところで、雑談したくなるようなネタを探してそれを中心に取り上げるようにっていう考え方をしています。

ソトコト-89

:枚方つーしんさんがやっぱりすごいなと思うのは、今日お越しいただいたみなさんがやっぱり枚方つーしんが大好きでだからこそここに来てくださるっていう、インタラクティブ(相互作用)な感じっていうんですかね。

1つの個人性としてメディアを見てくれるっていうのはすごくうれしいことだなと思うんですよ。
枚方つーしんさんはやっぱり枚方つーしんという1つの個人性がすごくされてるんだなっていう風に思います。だからみなさんここに来て温かみのあるそのメディアの話を聞きに来てるんじゃないかなって感じましたね。

:ありがとうございます。こんなに褒めてもらえるとは思っていなかったので恐縮です!(笑)

:今度じゃあ安達さんにちょっとお聞きしたいんですけども、安達さんはひとり観光協会ってことでいろんなことを個人商店的にやってるじゃないですか。
伝えたい人に伝えることの難しさを感じてらっしゃるのかなと思うんですけど、何か伝えたい人に伝えるための自分の必殺技みたいなのってあります?

:必殺技ですか(笑)

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:編集のスキルとか、表現のスキルとか。

:そうですね、『主観』を大事にしてるっていうのがあるかもしれないですね。

必殺技っていうことではないかもしれないんですが、例えばガイドをするとかこういうトークイベントをするときにそれこそ私はお寺とか仏像の話をすることが多いですけど、そういう話でいったら大学の先生とか専門の先生に話を聞いた方が絶対知識は多いしメモることも多いと思う。

ですけど、そうじゃなくてじゃあなぜ私がしかも奈良県出身でもないし専門家でもないしただの姉ちゃんって言ったらただの姉ちゃんなんですけど(笑)

じゃあそのただの姉ちゃんの話を聞きに来てくれる人に対して何を伝えるかっていうときに自分はこう思ったっていうところを軸にしようというのは気にしてますね。知識先行ではないというのは常々考えてはいます。五感を大事にしようかなというところですね。

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:今安達さんが大事にしてるところと枚方つーしんさんが大事にしてるところが全く同一ですよね。

たぶん情報としてソースみたいなものはみんなもう自分たちで自由に取りにいける時代だから、わざわざ最大公約数の人達を狙ったような情報のまとめ方みたいなものにみんな興味がなくなっちゃったんだと思うんですよね。

それよりはやっぱり一個人が発しているようなものに対して自分がどう共感するかとかっていうので自分の好きなメディアを選んだりとか自分の好きな服を選んだりとかするようになってきてる感じがします。

情報も経済も文化もやっぱり顔の見えることの安心感に回帰してきてるんだろうなって気はします。
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:人が人を動かすと思っているので、ソトコトさんをいつも拝見しててもそうですけれども、見てるとプロジェクトが中心ではなくってそこにいる人が中心になってるんですよね。

だから雑誌見てても指出さんの記事を拝見してもそうですけど、この人に会いに行きたいな、この人の話を聞きに行きたいな、って思う気がします。

他の雑誌とかだとここのカフェのケーキがおいしそうだな、このケーキを食べに行こうとかここのお寺のこのお庭がきれいだから行こうっていう何か物・場所目当てっていうところから、徐々に人が人に会いに行くっていうところに旅行だったりとか移住とかも、もしかしたらそうかもしれないですけど。

人が人を動かすっていうのはすごくこちらに引っ越してから実感するようになりましたね。

ちょっと私の方から質問させてもらっていいですか?

:どうぞ。

地域のために何かしたいけれどどうしたらいいか分からない

ソトコト-68

:奈良に限らずだと思うんですが、例えば枚方市のように住んでる人がわりと枚方いいところだしすごく過ごしやすいし好きだよっていう人が多い地域はそれはそれでいいかなと思うんです。

でも、奈良ってもちろん住みやすいし地元の人は自分の土地のこと好きだなと思うんですが、なかなか特に南の方に行けば行くほど過疎が進んでいたりとか若い人がみんな出て行っちゃったりして、何かをしようという気力すらなくなっちゃっているところって多くあると思うんです。

それでもそんな中で若い人達が何かしたいんだけどその何かがわからないというかどうにか自分の事としてこのまちのことをなんとかしたいんだけどやり方がわからない人がたまに相談持ちかけてくれるんです。でも私も一緒に悩んじゃって、何か秘策じゃないですけどポイントがあれば教えていただきたいなと思うんですが・・・
ソトコト-95

:はい、ありがとうございます。まず時代の話をしましょうか。

1980年代から2017年の今に至るまでは3つの時代に区切ることができると思うんですね。

(1)1つ目は「おいしい時代」
・数式で言うと+(たす)・プラス。
何でもどんどん足していく時代。
新しいベッドが手に入った、今度あのシーフードレストランに行こう、西武に行ったらあんないい旅行があるから遊びに行こう、みんな足し算。

(2)次に来たのが「丁寧な時代」
・数式で言うと-(ひく)・マイナス。
なるべく無駄なものは省く、削ぎ落としていくことが大事。
自分の中でゴテゴテに付いていた油のようなものを一回削ぎ落としたのがこの時代。

(3)そして今は「おもしろい時代」
・数式で言うと×(かける)・掛け算。
自分が社会の一員になって、やらされ感がない時代。

:安達さんへの答えになるのは3つ目なのではと思います。

リノベーションする・床貼りをする、実はこれって未来を作ってることと同じなんですよね。
明日の家を作ってるわけじゃないですか。あ、なんだ自分の暮らしを自分で作れるんだってわかった人達がたくさん増えました。

マルシェをみんなでやるのもそうですよね。巨大なイベントに参加することだけでイベントって楽しいって思ってた時代はとうに過ぎて、50人、100人でマルシェやってみんなで古本売ったりとかすることができる、その方が楽しいってわかった人達が各地域でマルシェやってるわけです。

自分が好きなことを課題解決のために使ったら良くて、足すんじゃなくて掛けるってことですよね。

掛け算にしていくことで、人が単に足し算の予定調和じゃないおもしろみを感じてくれるので、そのもんもんとしてる人の趣味を掛けるっていうのは1つ方法かもしれないですね。

まちへの『関わりシロ』

ソトコト-105

:あともう一つだけ。
たぶん安達さんがやってることも加藤さんがやってることもすごくその土地に『関わりシロ』があるからだろうなという風に思うんですね。

この関わりシロってのはヌリシロとかノリシロと同じですね。
余白という風に置き換えてもいいかもしれないんですけども、ツルツルピカピカのまちづくりをやってる所っていうのは、自分が関わらなくてもまちづくりうまくいってんじゃんみたいな感じであんまり興味をそそられないことが多いんですが、逆にソトコトに出てるような地域がみんなすごい偉いなと思うのは共通して1つあります。

何かというと、『弱み』を見せてるんですね。

うちには人がいないとか、うちはほんと今危ないんですよとか、こういう若者が来てくれたらいいのになとか、そういうことを行政の人やNPOの人や土地の人が普通に話をしてくれるような所は、関わりシロがたくさんあるんですよね。

自分がもしかしたらここで関わったら自分のスキルが役に立ったりしておもしろいんじゃないかなとか、そういう関係人口を増やせる場所っていうのが、もしかしたら今日こんな風に来てくださった方々みんな枚方のこと好きだったりこの地域が好きで来てくださってるんで、『関係人口』ですよね。
ソトコト-90
:ご出身の方のパーセンテージのわりには枚方つーしんを見てる方が多かったから、これは完全に関わることがおもしろいって来てくれてるんで、そういう人達が自分事としてもちろん自分の故郷だけじゃなくて自分が今住んでる所とか遠くにあるけども自分が縁があるなと思う場所に関わる時代なんだろうなっていう風に思いますね。

それもたぶん編集って視点から生まれた言葉なので、編集者であればあるほどたぶんそういう言葉を生み出していろんなみなさんに伝えていくことで集合知として言葉として残るっていうのも結構大事かなと思います。すみません、僕ばっか話してますね(笑)

:いえいえ、勉強になります。

お金になってる?

:じゃあ枚方つーしんさんはマネタイズどうしてるんですか?どうやってお金を生み出してるんですか?

:広告です。
いわゆるまちのお店が開店閉店したっていうのは我々ライターであったり、あと読者の方からも情報提供っていう形で家の近くで工事始めてたら何か作ってるっぽいから調べに来てくださいとかまちのみなさんが編集者として枚方つーしんに情報をいただいています。

ただそこではお金は発生しないのでどうしてるかというと、地元の情報が載ってる、地元の人が見る、地元の人が見るんやったら地元の人に対して宣伝したい会社さんが広告を出す。

基本的にはこれが枚方つーしんが成り立ってる仕組みで、開店閉店とかの情報の間に広告も入ってるので比較的すんなりと広告もご覧いただいてるっていうところですね。

:すごく楽しいことで、しかも社会に関わっていてそれがちゃんとお金になってるっていうのが偉いですよね。

ソトコト-109

:でもこれも枚方つーしんを立ち上げた頃は読者さんももちろんいないですしちょっとずつ毎日見てくれる方を増やしてきてって形なので、やっぱり毎日100人しか来ないところに広告出すっていうわけにもいかないので最初はマイナスで会社としては利益も出ない状態が続いていました。

けれども、ゆくゆくこれがおもしろくなるって考えで会社をずっとやってきてそれが結果的に今は広告としてお金をもらえてるという形になりました。

地域を編集するときの視点、まとめ

 

:ありがとうございます。じゃあまとめじゃないんですけども、編集者になるときのマインドとしてもこういうのいいと思ったので持ってきました。

地域を編集するときの視点ですね。
ソトコト-107

「あたらしい地方」を編集・発信するソーシャルな視点
1、関係人口を増やす
2、未来を作っている手応え
3、「自分ごと」として楽しい

:まずこの「関係人口を増やす」っていうのは行政の人にもよく言うんですけども、交流人口と定住人口の間に実は『第三の人口』があって、そこをみんなうまく見て取れていないから移住者もっと増えないかなとか観光のお客さんみたいになっちゃうと思うんですね。
ソトコト-21
今自分はすごくいい会社に勤められてるけれどもでも自分がやってる仕事があまりにもパートワークになってしまっていて自分が今誰のために何をやって何が作用してるのか見えなくなるときがあるんですね。

特に20代30代の方がお話されるのを聞いて、あ、それは本当にそうだな、大きな会社であればあるほど自分が誰のためにやってるかのダイレクト感が減っていってしまうのはやむないな、と。

逆にたぶん地方であるからこそ人口が少ない、それからそういうことができる人が少ないからこそお願いされる場合が多いっていうのは、よりダイレクトに自分達が社会を作ってることを感じやすいんですよね。

『やらされ感』じゃなくてやっていたら、「あ、そうか自分がこれをやったことであのおばちゃんが今日は野菜を手に入れることができたのかな」とか、そうリアルに感じられることを、地域で編集するときに視点として持っていてもらいたいと思います。

つまり『どのくらいそれを自分事として見ることができるか、おもしろくできるか』っていうことです。

それよりさっきみたいにまちを歩くことで誰かと知り合いになって、その人の困り事を聞いたらそれってもしかしたら僕達や私達がなんか一緒にできるかもねっていう方がおもしろいし、それがリアルに地域を活性化させる強烈なパンチになったりするのでそういう『自分ごと感』を持つというのは編集の視点としてもとても大事だなと思います。

結局ずっとしゃべっちゃいましたね、すみません(笑)

じゃあ安達さんから一言ずつ今日来てくださったみなさんに共有したいお話、メッセージとかあったらお願いします。

ソトコト-93

:私キャッチコピーで「奈良ひとり観光協会」って「ひとり」って使ってますけど、ひとりで何でもできますよっていうことではないんです。

私がやれることは私なりに全部やるけれども、誰かとつながる、誰かとつなぐための人間でありたいってのは常々思っていて、私ひとりではできないからこそ奈良にいる意味があるし、奈良でいろんな人と出会う意味があるんだと思っているんで、何か人と人とをつなぐ役割ってのができればなっていうのは最近大変感じております。

元々東京に10年ぐらいいたのもあるんで奈良の良さを首都圏に発信したいし全国にも発信したいしというところで、自分なりにできることを私ひとりの力ではなくって奈良で出会った多くの人達の橋渡しとなるべくやっていこうかなと思っています。もし気になる方はFacebook見といてもらえばいいかなと思います。

:ありがとうございます。じゃあ加藤さんお願いします。

ソトコト-110

:今日このイベントに来られてる方はやっぱり地元に関心があったり地元のことが大好きだっていう方が多いと思うんですけど、『地元好き度ピラミッド』みたいなのを作ったとき上にの方に入る方は勝手に動いてくれはると思うんですよ。

でも地元に住んでる多くの方は、たまたま住んでるとか、そんなに地元愛がないっていう方もやっぱりたくさんいはると思うんです。

そういう方をどうやって『関係人口』に巻き込むかっていうと、「地元っていいですよね」っていう力技じゃ難しいなというのがあって、そこに必要なのはユーモアであったり笑いであったり人に話したくなるそんな小さなことの積み重ねだと思うんです。

「あ、結構ここいいやん、人にも自慢できる小ネタあるやん」っていうところから、何かにつながっていけたらなと思います。

そういう思いでやってる枚方つーしんというサイトなので、そんな大きな大義名分はないんですけど結果的にそれが枚方を盛り上げることにつながったらいいなと思ってやってるので、みなさんも勉強も必要ですし、いろんな熱い思いも大事なんですがそれを伝えるときの伝え方はまっすぐ投げるだけじゃなくていろんな角度から探ってもらえれば、おもしろくなるんじゃないかなと思っております。

:ありがとうございます。長い時間みなさん聞いていただいてありがとうございます。

なんか持ち帰っていただいて是非自分達の活動とか活動まで芽生えていないにしても頭の中に置いといてください。

地域に関わることはほんとおしゃれでおもしろくてカッコイイっていう風に変わりましたんで、楽しんでもらえるとうれしいです。

ソトコト-114
(最後にみなさんと枚・かた男のざぶざぶポーズ(笑)で記念撮影)

 


以上、トークライブのレポートでした。
実際には指出さんにもっとたくさんの事例を一つ一つ大切な宝物のようにご紹介していただきました。長さの関係で泣く泣く割愛しております・・・。もっと知りたいと言う方は、ぜひ『ぼくらは地方で幸せを見つける』を読んでみてください!

今の枚方やどこかの地方をもっと盛り上げたいと思っていたり、まちづくりに興味がある方にとって、「地域を編集する」ってどういうことかというヒントがたくさんあったのではないでしょうか。
私も個人的に大好きな分野で興味津々で取材させていただいて、自分で記事を書いておいてなんですが書き留めて何度も見返したいと思います。


指出さん、安達さん、すてきなお話をありがとうございました!

ソトコト-116
(指出さん・安達さん・加藤、主催の枚方T-SITEのコンシェルジュのみなさん・前回ソトコトに掲載された尼崎ENGAWA化計画の藤本さん)

◆関連リンク 

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