すっかり秋本番ですね
みなさんは、“何の秋”ですか?
食欲の秋?読書の秋?
私は、“知識深まる秋”ですかね
……と、言いたいところですが。
やっぱり、ここは睡眠の秋でお願いします。
※趣味は、風に吹かれて昼寝すること、です。
そんなほんちゃん@ひらつーがお送りする、秋の新シリーズ。
「津田サイエンスヒルズ見せて!」
(シリーズ概要はこの記事をチェック!)
(「津田サイエンスヒルズ見せて!」シリーズはこちらから)
20を超える企業・施設が集う場所、「津田サイエンスヒルズ」。
そこには果たしてどんな技術やお仕事があるのか…?
記念すべき第一回目はここからスタートです!
「株式会社 枚方技研」さん!じゃじゃーん!
(慣れないロケで、白衣を着忘れた…)
サイエンスヒルズ内での場所は、この辺りになります。
だいたい入り口あたりですね。
枚方技研さんのwebサイトには、
「当社は1972年の創業以来、一貫して機械設計に取り組んで参りました。
と書かれてありますが、どんなことをしているのでしょう?
できるだけ(できるだけ、ね)分かりやすくお伝えできればいいなぁ。
では、いってきます!
1:「枚方技研」って、どんな会社?
2:偶然が生んだ”ブレない”一押し
3:そしてあなたのお家にも?〜まとめ〜
今回お話を伺ったのは、枚方技研の浅野さんです。
浅野さん、落ち着いています。
ほんだ
枚方技研って、名前からして枚方生まれの会社ですか?
浅野さん
元々は、枚方の中宮に会社がありました。1972年に出来たので、43年目です。
同じ枚方にある小松製作所が作るものの設計などを請け負っていたんです。
ほんだ
小松製作所ということは、大きな部品の設計を行う会社なんですか?
浅野さん
相手の「こんな部品・機械を作りたい」という要望に応じて図面を作っていきます。
もちろん大きなものもですが、小さな機構(仕組み)なども設計しますよ。
ほんだ
なんでも作れてしまうわけですか!
(丁寧に説明をしてくださる図)
浅野さん
設計しても、実際に動かなければ問題外になってしまいますよね。ですので、使う材料の特性やどんな部品が存在しているのかなどをしっかり把握している人が設計を担当しています。
ほんだ
なるほど!その道のスペシャリストが担当されているんですね。
では、今でも主には図面を作るのが中心の業務ということなんでしょうか?
浅野さん
最初はそうだったんですが、そのうち「実際に作ってみては」ということで、製作部門ができました。
ほんだ
確かに、図面だけでなく本当に動くかどうかを実際に作れた方がいいですものね。
では、「設計」と「製作」が枚方技研さんの2枚看板、と?
浅野さん
実は…話がちょっと変わるのですが、「防振材」というものの取り扱いも行っております。
ほんだ
ボウシンザイ?
浅野さん
そうです。
乗り物や工場などにある「回転機構(モーターみたいな回るところ)」からは、どうしても振動や音が発生します。この揺れや騒音を抑えるものが「防振材」です。
ほんだ
なぜまた、急に防振材が登場することに?
(こちらが防振材「ノンブレン」たち)
浅野さん
経緯にはいろいろあったのですが…。
ざくっと話すと、
ある設計チームが「発生する振動を防ぎたいけど、ばっちりの防振材が見つからない」という問題を抱えて、長期間に渡って悩んでいた。
↓
なかなか解決策が見つからない!どうしよう!
↓
とある会社が良い“素材”を開発できるという話を耳にする。
↓
その“素材”を使った防振材を枚方技研で作ってみれば、という話になったので作ってみる。
↓
あらまぁ!長期間頭を抱えた問題が解決したじゃないの!!
↓
…きっと他にも同じような悩みを持っている会社は多いはず!
↓
防振材を販売する部門を作って、枚方技研で商品化!
↓
イマココ
という流れです。今から15年以上前の話ですけどね。
ほんだ
ずっと抱えていた問題を解決するあきらめない!という執念だけでなく、偶然知った素材を自社で設計して商品化にまで繋げるというのは、すごいですね。
しかし、最初は偶然だったとしても、このご時世は「防音・振動への対策」というものへの需要って、日増しに高まってますよね?
浅野さん
そうですね、近年はいろんなものが「小型化・軽量化」していきますが、そうするとどうしても軽く・薄くなってしまい音や振動には弱くなります。そのため、昔と比べるとその対策はどんどん高まっていますね。
ほんだ
その防振材って、珍しいものなんですか?
浅野さん
防振材は珍しいものではなく、ゴムやシリコンで作られているものはあちこちにあります。しかし、枚方技研の防振材「ノンブレン」は“ウレタン”を使っているのが特徴です。
ウレタン…いろいろな用途で使われている素材です。例えば、台所でつかうスポンジとか、自動車のシートクッション、家の断熱材、あとは合成皮革なんかにも。よくキッズコーナーの床に使われている”ふかふか素材”も「ウレタンマット」だったりしますよ。
(いろいろ防振材を触ってみる図)
ほんだ
防振材にウレタン…これは珍しいんですか?
浅野さん
知っている限り、世界でも数社くらいですね。
ほんだ
世界で数社!!なぜそんなに少ないんでしょうか?
浅野さん
理由としては、原材料であるウレタンの価格が割高ということがあるでしょうね。そのため、大量に防振材が必要だ!という分野にはとても弱いんです。
しかし、枚方技研は価格よりも「性能」を重視しています。性能には絶対の自信がありますよ。
ほんだ
なるほど、用途が限られている分野で「性能」に特化して挑戦していく、と!
浅野さん
精度を求められる部分に“少量でも、多品種”ですね。採算を求める大企業には、踏み込めない領域です。
ほんだ
実際にはどんな場所に使われているんですか?
浅野さん
例えば、JR西日本700系新幹線のぞみの座席の下(床下)にはノンブレンが使われています。時速300kmというスピードが発生させる振動や音に耐えるものを開発するには、とても苦労しました。
他にも、バンクーバー五輪のボブスレー日本代表のそりや、ハワイ島にある日本のすばる望遠鏡、兵庫県にある実験施設「SPring8」にある「SACLA」という実験機器にも使われています。
(いろんな色や形がある「ノンブレン」たち)
ほんだ
五輪にすばるにSPring8ですか!!!世界でも有数の精度を誇る実験・観測機器に使われているということが、防振材の性能を何よりも表していますね!!
※科学好きのほんだは、ここでやたらと興奮してしまいました。
…しかし、防振材って一般向けにも購入できたりするんですか?
浅野さん
もちろん、家庭用にもネットショップでお求めいただけます。冷蔵庫や洗濯機、エアコンの室外機の下に置く、といった用途がありますね。
それとですね、もう一つ新商品があるんですよ!
浅野さん
枚方技研の防振材「ノンブレン」は表面がねっとりしています。これはウレタンの性質なので、何も塗っていないし切るとどこもねっとりしているんです。
この粘着力、防振材としては特に使い道がないんですが、この粘着力を使えないかということで耐震マットを作りました。
ほんだ
これが新製品ですか!
浅野さん
いや、これは8年ほど前に作りまして、東日本の大地震でも実績があります。これを家庭で使うときに一つ気づいたことがあってですね。重いものが倒れるといけないということで使うものなのに…重いものの下に耐震マットを引くのって大変なんですね。
(大事なものの下には、耐震マットが敷いてありました)
ほんだ
あ……そうか。重いってことは、持ち上げるのが難しいですもんね。
浅野さん
そうなんです。そこで開発されたのが、こちらです!
(どどーん)
ほ
おぉぉ……またこれは変化球ですね。
(新製品を愛でる浅野さん)
浅野さん
下に敷くのが難しいなら、横から挟んで揺れを吸収し、転倒を防ごうというものです。
キャラクターは、せっかく作るならかわいい方がいいでしょ、ということで(笑)。
名前は「ビタッピー」と言いまして、今年発売を始めた新商品です。こちらもネットで購入することができますよ。今後、ホームセンターで置いていただけないか検討をしているところです。
(けなげに浅野さんの携帯電話を支えるビタッピー)
ほんだ
これって粘着が弱くなることはないんですか?
浅野さん
元々素材が持つ性質なので、無くなりはしないですね。汚れが着くと弱くなりますが、水洗いして陰干しすれば元通りです。ただ…
ほんだ
ただ?
浅野さん
日光には弱くて、変色してしまうのが難点です。
ほんだ
粘着力に影響は?
浅野さん
ほとんどありませんね。見た目の影響は大きいですが。
ほんだ
これ、思ったよりも本当にビタッッッと着きますね!!!
浅野さん
1匹あたりで10kgほどの加重に耐えられますよ。
(これだけいれば、何kgに耐えられるんだろう…)
ほんだ
しかし、お話を聞いていくと実にいろいろとされていますね。社風として「チャレンジ」する方なんでしょうか?
浅野さん
まぁいろいろやってみないとねぇ、ということです。やってみて売れなかったものもありますが(笑)。今も開発中のものがありますよ。今は言えませんが、そのうち出てきます。出たらwebで発表しますよ。
ほんだ
なんたって、ビタッピーの次ですから…とても楽しみです!
浅野さん、今日はありがとうございました!
(浅野さんとビタッピーと記念に)
枚方技研という名前だけ聞くと、とても堅い企業のようなイメージを持っていたんですが…話をきくとすぐにそのイメージはどこかへ行ってしまいました。
最近はどんな場所でも「快適性」を求められるようになってきました。しかし、その快適さの裏側には支える機器の設計や製作、そして防音や防振といった技術が隠れていました。
まるで当たり前のように感じていた「快適さ」を支えている、私たちの目にはほとんど触れることがない枚方技研の技術。次はどんなびっくりするものを生み出してくれるのでしょうか。これからもこっそりと、その用途が広がっていくことに期待したいですね。
《おまけ》
枚方技研の入り口には、ビタッピーの神がいました。
◆関連リンク
・津田サイエンスヒルズ
・株式会社枚方技研