今回から全7回にわたって、枚方市駅周辺再整備について、シリーズとして各関係団体のインタビュー記事をお届けしていきます。
第1回目の今回は
枚方市役所へうかがい、市駅周辺等活性化推進部の友田課長にお話を聞いてきました。
枚方市駅周辺の再整備
具体的にどう変わる?
― まず『枚方市が枚方市駅周辺の再整備について動き出していること』を知らない枚方市民の方も多いと思うので、そこからご説明いただければと。
枚方市では平成25年3月に「枚方市駅周辺再整備ビジョン(→PDF)」を作成し、関係者等と意見交換を行いながら、ビジョンの実現に向けて取り組んでいます。
枚方市駅周辺再整備の実現に向けて(イメージパンフレット)よりイメージパース(※あくまでイメージです)
― 再整備ビジョンとは?
枚方市駅周辺は長い年月をかけ築き上げられてきた行政サービス機能、商業・業務機能等が集積する本市の中心市街地であり、鉄道や路線バスの乗降客数の多さからも府内有数の交通結節点として本市の中枢機能を担っていると同時に、さまざまな問題を抱えています。
再整備にあたっては、建物や道路、公園を個別に整備するのではなく、地域全体を総合的にとらえ、地域に関わる人々が魅力あふれる賑わいのあるまちの構築をめざし、実現化を図ることを目的に、このビジョンを策定しました。
「枚方市駅周辺再整備ビジョンに基づく将来イメージ」より
※今後、地元の皆様や関係機関と協議し、具体化を図っていく過程で変わることがあります。
枚方市駅周辺再整備ビジョンに基づく将来イメージ(※画像クリックで拡大)
ビジョンは「どういう街にしていきたいか?」という街のイメージ像を、いろんな考え方をもとに作成したもので、現在はこのビジョンを実現するための取り組みを進めています。
枚方市駅周辺再整備の実現に向けて(イメージパンフレット)よりイメージパース(※あくまでイメージです)
大きな範囲になりますので、枚方市駅周辺を5つの街区に分けて、街区ごとに関係者の方々との協議などをさせていただいている状況です。
②街区にあたるひらかたサンプラザ1号館(右)と枚方T-SITE(左)
― 実際に進んでいっていると。
はい。市役所本館別館は現在④街区にありますが、北河内府民センターのある⑤街区に合同庁舎を整備する方向で検討を進めています。
北河内府民センター
⑤街区の土地利用イメージ図
※このイメージ図は、現在関係者で検討中のものであり、今後変更する可能性があります。
枚方市駅周辺再整備の実現に向けて(イメージパンフレット)より⑤街区のイメージパース(※あくまでイメージです)
今の府民センターは大阪府の施設になっているので、府は③街区に移転する方向で、国、府、市で検討していく考えです。
③街区につきましても市街地再開発事業を目指して、関係者と協議をしている状況です。
③街区の土地利用イメージ図
※このイメージ図は、現在関係者で検討中のものであり、今後変更する可能性があります。
天野川から③街区をのぞむ
― 合同庁舎を整備する方向はご存知ない方も多いと思います。
私たちとしてもビジョンの取り組みとあわせて、情報発信していかなければいけないと考えています。
― 他に取り組まれていることは?
平成30年度に「枚方市新庁舎整備基本構想」を策定するにあたり、3月31日まで市民アンケートを実施しており、また、新庁舎の基本的な考え方や導入する機能などについて話し合うワークショップの募集を3月16日まで実施しております。市民の皆様のご協力をお願いします。
具体的な整備モデルを示すための『枚方市駅周辺再整備基本計画』を平成30年度末に策定するにあたって、その計画を作る上で、市場性を反映し、実現性を高めるために、事業実績や意欲ある民間事業者を公募し、第三者で構成する選定審査会で4事業者を民間アドバイザー候補者として選定し、各事業者との協定締結の手続きを進めています。今後、アドバイザーからの提案・助言や関係者との意見交換などを参考としながら計画を定めていくことになります。
枚方市駅周辺再整備の実現に向けて(イメージパンフレット)よりイメージパース(※あくまでイメージです)
枚方市駅周辺の範囲が広がる?
人が回遊するにぎわいある街へ
― 建物の高さの制限などが変われば駅前も変わりそうですが。
ビジョンのコンセプトとして、駅前広場周辺に集中している現在の人々の行動範囲を広げることによって、まち全体に「ゆとり」を創出することをあげています。
その範囲がこちらの図面の範囲になります。
ビジョンのイメージとまちづくりの取り組み
駅前広場周辺だけで人々が行動しているのを、例えば、淀川や天野川、府民センターのあたりなどまでに広げて回遊性を高め、まち全体にゆとりを持たせることが重要と考えます。
外周道路の東端となる禁野橋から天野川をのぞむ
枚方市駅周辺再整備の実現に向けて(イメージパンフレット)より外周道路のイメージパース(※あくまでイメージです)
どの様な土地利用や施設配置、都市機能の導入をすれば行動範囲を広げ、回遊性が向上できるのか?ということを含めて、民間アドバイザーから提案・助言をいただきながら検討していきます。
― (仮称)枚方市総合文化芸術センターが枚方市駅北側にできるというのも回遊のための施策のひとつでしょうか?
そうですね。2020年度中に完成予定の(仮称)枚方市総合文化芸術センターを文化芸術拠点として実現することで、ビジョンに基づく連鎖的なまちづくりのきっかけになってくると考えています。
(仮称)枚方市総合文化芸術センターのイメージパース(→施設運営について(基本方針)PDFより)
今の市民会館にある機能を(仮称)枚方市総合文化芸術センターに移転することで、現在の市民会館の土地が空くことになります。先ほどお話した庁舎の移転という話も含めて、岡東中央公園周辺の利活用の幅ができるものと考えています。
市民会館の跡地にどういう機能をもたせるかというのは、まちづくりを考えるうえで、すごく重要なことだと考えています。
現在の枚方市市民会館
― 具体的にはどうなっていくのでしょうか?
民間の力を活用して、どういった施設や機能をもたせるのか、どういう人の流れができて、どのように賑わいが創出できるのかというところを考えながら、平成30年度末に策定する基本計画を立てていきたいと考えています。
― 枚方市駅の駅前広場はお迎えの車でいつも混雑していると市民の皆さんは感じていると思うのですが、そのあたりの改善も計画に入ってくるんでしょうか?
そうですね。交通の面から言いますと、枚方市駅は特急電車の停車や、路線バスについても府内有数の路線数と便数を有する利便性の高い駅です。
ただ、おっしゃるように公共交通だけではなく一般車両の流入という問題はありますので、今の手狭な駅前広場をもう少し拡張し、歩行者に配慮しながらも、さらに利便性を高め、現在の駅前広場の課題を解消していきたいと考えています。
枚方市駅南口駅前広場
枚方市駅周辺再整備の実現に向けて(イメージパンフレット)より南口駅前広場のイメージパース(※あくまでイメージです)
枚方市駅北口駅前広場
枚方市駅周辺再整備の実現に向けて(イメージパンフレット)より北口駅前広場イメージパース(※あくまでイメージです)
市役所の建て替えと移動可能性
便利さと回遊性のバランスは?
― では、平成30年度中に再整備の基本計画が出来上がって、そこで今よりもさらに未来の枚方市駅周辺の姿が鮮明に見えてくるんでしょうか?
そうですね。
ビジョンの範囲を一気に再整備はできませんし、多くのお金もかかると想定しています。
補助金などの財源も充て、市の全体的な財政状況も踏まえながら、シミュレーションをかけていくことも基本計画に盛り込まれる内容になってきます。
岡東中央公園から枚方市役所をのぞむ
― 枚方市役所自体を建て替えるという案も含まれているんですよね?
はい、含まれています。
もちろん庁舎整備にもお金がかかってくるということになります。
逆に言うと、枚方市民の皆さんのお金を使うわけですから、枚方市駅周辺だけにお金をかけるわけではなくて、全体的な市の財政状況を踏まえ、この事業を進めていく必要があると考えています。
⑤街区には国の施設である税務署や簡易裁判所などがありますので、国との合同庁舎化の検討を進めている状況です。
写真中央は⑤街区にあたる北河内府民センタービル
― 枚方市駅から市役所までの距離が伸びるけれども、その分いろいろな可能性が広がるということですか?
そうですね。回遊性を向上させるためにどのような仕掛けが必要なのかを検討することが重要と考えています。
新庁舎の整備が、市駅周辺のまちづくりにおいて、生活サポート拠点となるように取り組んでいきます。
また、枚方市駅近辺には市民サービスコーナーなどの行政施設がありますが、すべてを新庁舎に集約するということではなく、駅の近くあったほうが良い施設は駅近くに配置するなど、柔軟な考えをもってやっていきたいと考えています。
枚方市駅東改札口前にある市駅市民室サービスセンター
― 市役所の場所が移動するとしても、全てそちらにまとめるわけではなく、利便性を考えて枚方市駅に今ある便利な関連施設などは、そのまま置いておく可能性もあると?
はい。そういったことも、今検討している状況です。
― 実際のところ、枚方市駅周辺再整備の進み具合はどうなんでしょうか?
まちづくりの計画として『枚方市駅周辺再整備基本計画』、また、新庁舎の基本構想の策定に向けて取り組んでいる状況です。
市駅周辺再整備の対象エリアの中に市役所がありますので、庁舎整備が、まちづくりに大きく寄与する関係から再整備基本計画の策定と庁舎基本構想の策定は、互いに連動しながら、取り組む必要があると考えています。
新庁舎基本構想では、「市役所のどういった機能をもたせるのか?」を含めて、新庁舎の整備に関する基本的な考え方などを整理していく考えです。
枚方市役所
― 枚方市駅周辺という広い範囲でのビジョンで、主な取り組みスケジュールも出されていますが。
ビジョンでは、概ねのスケジュールをイメージとして示しています。
直近では2020年度の供用を目指した(仮称)枚方市総合文化芸術センターの整備を進めているほか、③街区(枚方市駅北東周辺)や、庁舎についての検討に取り組んでいます。
枚方市駅周辺再整備ビジョンより主な取り組みスケジュール(※画像クリックで拡大)
― 今わかっている2020年に完成予定の(仮称)枚方市総合文化芸術センター以外にも、平成30年度中に出来上がる『枚方市駅周辺再整備基本計画』でさらに見えてくるのでしょうか?
そうですね。まちづくりのスケジュール感や概算的な費用も『枚方市駅周辺再整備基本計画』の節々に入れられたらと思っています。
基本計画は、市だけで進めてるわけではなくて民間アドバイザーや関係者とも意見交換をしながら、まとめていきたいと考えています。
― 枚方市駅周辺の未来のモデルとして「この街のイメージ」などはあるんですか?
全国の再開発事業などの事例を参考にしているのですが、枚方市のまちづくりにピタッと合った事例はなかなかないと思います。
そのひとつは「庁舎とまちづくりの関係を連動してやっている」こと、もう1つは「これだけの大きな範囲で再開発をやっているところ」は全国的にもなかなかないんです。
例えば合同庁舎の部分では平塚市などを参考にしたりしています。
アドバイザーの部分であれば、先進事例を参考にしながら取り組んでいます。
― では全国でもあまり類を見ないような大規模な再整備になると。
そうですね。全国的にも注目はされているのかなというのは感じます。
市街地再開発事業は例えば、今ある地域課題の解決を図るために、建物を集約して建物を高く作り、余剰地を生み出し、その余剰地を公共の用地として、例えば駅前広場として整備するなどといった事業手法であり、行政が関わるべきところになりますので、街をより良くするために関係者と協議を進めているという状況です。
関係者の皆さんもそれぞれの目的がありますが、大きな方向性、例えばそれぞれの関係者も街を良くしたいという思いは変わらないと思っています。
その思いに向かって、どのようなプロセスを、どう踏んでいくかを、みなさんの目線を合わせていくことが大事だと考えています。
― みなさんの目線を同じ点に合わせるのは大変なのでは…?
まちづくりというところで、市が中心となってコーディネートしていく立場だとは考えています。色々と難しい部分はもちろんありますが、やりがいのある部署だとは思います。
― 人を中心とした街づくりのポイントはどの部分でしょうか?
いろいろな方々とお話している中で、岡東中央公園はかなり注目されていて、ここが1つのポイントかなと思っています。
岡東中央公園
駅の近くにこういった広場として活用できる空間があるので、再整備にあたってやはりここを活かさない手はないのかなと。
枚方市駅周辺再整備の実現に向けて(イメージパンフレット)より岡東中央公園周辺のイメージパース(※あくまでイメージです)
こういったスペースをどう活かしていくかがポイントになってくると思います。また、隣接している淀川と天野川も是非とも活かしていきたいなと考えています。
― 駅前のすぐ近くに、岡東中央公園規模の公園があるというのは…?
40万人都市の中で、駅前にこういった空間があるというのは全国的にもあまりないのかなと。
― それは枚方市駅周辺の個性の部分でもあるんでしょうか?
そう思っています。
今でも岡東中央公園で賑わい創出のイベントや交流などをされていますが、そういったところをさらに広げていくような形、もしくは新たな取り組みなんかができたらなという思いはみなさん同じではないかと思います。
少しでも理想に近づけていけるように取り組んでいきたいと思っています。
2017年9月に岡東中央公園で開催されたオクトーバーフェストのようす(→詳しくはこちらの記事で)
― 今回の枚方市駅周辺再整備について、枚方市役所の力の入れ具合は星5つでいうといくつでしょうか?
星5つ以上です。
今年度、私たちの市駅周辺等活性化推進部が発足しまして、市長の思いもあってこのビジョンをより具体的に実現性のあるところへ進めていきたいという思いがあります。
― 官民のどちらがリードをとるべきでしょうか?
まちづくりのコーディネートは市が中心になり、場面、場面によって、それぞれの皆さんの役割があると思いますので、産官学民それぞれが、それぞれの立場で中心になるところも出てくるのかなと思っています。
― 産官学民の学のところでは、関西医科大学がこちらに移転してきたということも大きなことですよね?
大きいですね。今、駅前周辺に学生さんがかなり増えてきているのかなと。学生さんの行動範囲もどういう広がりをもたすのかというところも、これからの注目すべきところかなというのは感じています。
関西医科大学(画像提供:関西医科大学)
あとは子育て世代のお母さんとかお父さん、またご年配の方もゆっくりくつろいでいただけるような駅前の空間づくりは必要だと考えています。
― なるほど。
枚方市駅周辺再整備の実現に向けて(イメージパンフレット)よりイメージパース(※あくまでイメージです)
枚方市駅周辺を歩いていてワクワクというか、イメージとしては「点から点の移動」ではなく、歩いていて楽しい、色々と移動して「面として楽しめる街」ができたらいいなというのはあります。
音楽聴いて下を向いて歩いているというイメージではなくて、いろんな所を見ながら人々が歩き、交流している姿が当たり前となる街ができれば、それがまちの活性化につながっていくと考えています。
地権者さんが多ければ多いほど、皆さんそれぞれの思いや意見がありますので、これを1つに結びつけていくために市がコーディネート役となっていかなければと考えています。
― 話を聞くと、枚方市駅周辺再整備が着々と進行中だということがわかりました。
道路や建物などの整備では、目に見えるハード部分の変化が見えて、進んでいると感じると思うのですが、そこにもっていくためには仕掛けや仕組み、また、資金を含めた整理が必要となります。当然、ソフト面も意識しながら、それらができて、初めて目に見えるハードの整備となります。
そのための調整などを関係者と協力しながら行っていますが、表向きになかなか見えないのは心苦しいところではあります。
理想的なもの、目標を掲げて、そこに近づけていくためにどれだけのプロセスを踏んでいかなければいけないのかというところを、行政側としても表に出す「出し方」に工夫が必要だと考えています。
着々と目標をもって、理想のまちづくりへ向けて進めている状況である…ということは知っていただきたいですね。
― なるほど。
枚方市はかなり大きい街ですので、今回は枚方市駅周辺の再整備ですが、例えば香里ケ丘地区の香里団地なども建て替えが進んでいる所もありますし、その他の場所でも、街の生まれ変わりを今まさに必要としているところが多いと思っています。
ただ、それぞれの場所に合った個性を持ったまちづくりが必要なのかなとも考えています。
枚方市駅周辺の新しい街づくりが完成して、初めて枚方に訪れた人がこの街に住んでみたいな、と思える街の顔となり、行政の課題のひとつである「定住促進」のキッカケにもなるように、関係者と協力しながら取り組んでいきます。
以上、枚方市駅周辺再整備について、枚方市役所の市駅周辺等活性化推進部の友田課長にお話をうかがいました。
次回は京阪ホールディングス株式会社のインタビューをお届けします!