”食べられるインク”って一体どんなん?枚方企業団地の「ユニオンケミカー」でクッキーに印刷してもらってきた

まいど
肌の乾燥で秋の深まりを感じる男、ほんちゃん@ひらつーです。
(ただの乾燥肌)

ほんちゃん-1608221 ライター:ほんちゃん@ひらつー
全国でも稀有な「フリーランスの科学コミュニケーター」として、全国を駆け回るひらつーの外部ライター。拠点はもちろん枚方。近頃めっきり運動不足で、増量気味。やばい。 (→ほんちゃんについて詳細

あれは、昨年の秋冬シーズンのこと
津田サイエンスヒルズ見せて!」シリーズが一段落した頃でした。

枚方にはもっといろんな技術を持った企業があるはず
どうしたら取り上げることができるんだろう

と、もやもや思いつつ、気づけばすっかり時は流れておりました

そんな時、すどん@ひらつーから一本の連絡が。

「津田のシリーズを見たという会社さんから、取材に来て欲しいと連絡がありましたよ」

なんやてー!(驚愕)

しかし「来て欲しい」だなんて…どれほどすごい仕事が登場するんだろう
これはぜひとも突撃せねば

と、期待を膨らませつつ訪問してきたのが……はこちら!

ユニオンケミカーさーん!!

ばばーん

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(久々に白衣着た)

場所は、枚方企業団地の中になります。

地図ではここ↓

枚方市招提田近3丁目10です。くらこん工場直売場のすぐ横あたりですかね。

ユニオンケミカーさんのwebページには

「ひらめきと技術力の調合」

とあるのですが、一体何を調合しているのでしょう?
久々ですが、楽しく取材していければいいなぁ!

では、行ってきます

もくじ
1:「ユニオンケミカー」って、どんな会社?
2:食べられるインク、何に使う?
3:
 外との交流で、新しいビジネスを!〜まとめ〜 

今回は大勢でお話を伺うことに。
詳しい部分は、主に新事業開発室の河原さん(向こう側の中央、白衣の方)から伺いました。

ユニオンケミカー-1608223
ほんちゃんが白衣を着ると、どっちが取材しているのかわからなくなるので、今回は白衣を脱いで取材してます。
(脱いだ白衣は、こっそり椅子にかけました)

1:ユニオンケミカーって、どんな会社?

ほんちゃん
ユニオンケミカーさんは、どんなことをされている会社なんですか?

河原さん
元々は、転写紙(カーボン紙)作りからスタートした、”印刷関連”のものづくりをしている企業です。創業は1920年でして、もうすぐ創業100年を迎えようとしています。

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(本物の白衣が決まっています)

ほんちゃん

おぉ、それは老舗ですね!ずっと枚方にある会社なんですか?

河原さん
最初は大阪市内だったのですが、1971年に枚方へ移転してきました。ちょうどこの企業団地ができてすぐから居たんですよ。

ほんちゃん
おぉ、枚方でも40年以上の歴史があるのですね。元々はカーボン紙などから始まったということでしたが、今はどんなものを?

河原さん
プリンタ用のインクやインクリボンを作っています。また、その技術を生かして修正テープやテープのり、テープマーカーも作っていたりしますよ。ここの会社は「何か一風変わったところでやってみようか」という話がよく出てくるんです。その分失敗もよくしますけどね(笑)

ほんちゃん
一風変わった、とは?

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(話はどんどん進みます。ひらつー歳時記で毎回使用している写真は実はこのインタビューの時のものでした)

河原さん
ここは大手ではありませんので、その分お客様の”困り事”や大手がやらないことに挑戦しようとしているんです。例えば、”印刷しにくいものに印刷する”とか。

ほんちゃん
印刷しにくいものって、どんなものでしょう?

河原さん
ガラスに印刷しようとすると、インクが染み込まないでしょ?逆に染み込みすぎたり水分があるものに印刷しようとすると、にじんでしまったりもします。他にも、酸・アルカリや光が当たる場所にあるものだと色が変わってしまったり、消えてしまったり。

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(印刷しにくいファンデーションにも、この通り。これは市販のファンデーションにテスト印刷したものだそう。

ほんちゃん
確かに。ということは、今回の一押しの話もそんな”印刷しにくいもの”に印刷できるということですね?

河原さん
10年ほど前に”これに印刷できたら面白くない?”ということで出てきたのが「食べものに印刷する」ということだったんです。ここでは今、「食べられるインク」を開発しているんですよ。

2:食べられるインク、何に使う?

ほんちゃん
そういえば、いつだったかTVでケーキの上にお祝いする人の顔を印刷できるって特集を見ましたが、そういうことですかね?

河原さん
そうですね。元々食品への印刷って卵の殻などに対しては他もやってたんですけど、グラフィックを直接印刷するということはなかったんです。なので、そこを細々とでも攻めていこうと…。でも、時代を先取りしすぎたのか、なかなか光が当たりませんでしたが。

ほんちゃん
ようやく時代が追いついてきたという事業なんですね。

河原さん
食べられる印刷が話題になってきたのは、ここ数年というところです。最近になってようやく、必要とされるようになってきました。例えば、医薬品です。錠剤に直接、用法や用量を印刷できると飲み間違いや調合間違いを防げますし。あとは、地方のおみやげを考える際にも、重宝されるようになりつつあります。

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(社内テストで市販の錠剤に印刷をしたもの。 直径 1cm ほどの錠剤です。)

ほんちゃん
確かに、薬は相当重宝されそうですね。

河原さん
ということで、だったらもっと他にも可能性はないものか?という思いから立ち上げたのが、「フードプリントインク.com」というwebサイトです。

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(webサイトのトップページ)

ほんちゃん
これは、どんなサイトになっているんですか?

河原さん
食べられるインク・印刷って、注目され始めたもののまだ認知度が薄い状態です。そこで、「ちょっと気になっている」や「こんなことしたい」という要望を聞いて解決できるようにしたくて作りました。そこから、お客さまを実際にラボへ案内して直接コミュニケーションをはかったりもします。

ほんちゃん
なるほど、”皆さんの要望やお困りごとはこちらまで!”という窓口なんですね。

河原さん
コミュニケーションから新たな課題が生まれたら、そこに挑戦することで大きな新展開が図れるかもしれない。内部だけでチャレンジの方向を考えるのではなく、外から機会をいただいて一緒に立ち向かうというものづくりの形を試していきたいんです。

ほんちゃん
”コミュニケーター”という仕事をしているものとしては、とても興味深いです!しかし、10年ほど前から取り組み始めて、ここ数年でようやく注目され始めたということですよね?それまでの時代は、どのような気持ちで取り組まれていたんですか…?

河原さん
そりゃ、どうなんだろうか…と、相当不安でした(笑)。ここでは開発していても、製造はしていません。あくまでも「研究施設」なんですよね。製造しているのは、あくまでも「食べられないインク」なんです。口に入れるものは、衛生面が相当肝心になってくるものなので。

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(苦い思い出がいろいろあったのかも)

ほんちゃん
そりゃそうですよね。では、どうやって作っているんですか?

河原さん
共同開発という形で食品添加物メーカーさんに作っていただいています。いわばレシピをこちらから提供している感じです。食の安全性というものは一番怖かったですよ。ちょっとのダメージでも致命傷になりかねないですから。ここには工業用インクの知見があっても食品の知見はない。なので、食品についてはプロである添加物メーカーの知見を足してもらうとどうなるのか、とトライしてみたんです。

ほんちゃん

異業種の掛け合わせで、新たな分野へトライしたわけですね。しかし、食品や薬は一口に言っても幅が広いですよね?要求される条件や内容も大きく変わるのでは?

河原さん
その通りです。印刷する対象の表面状態や材質、化学的な特性、使われ方などから満たさないといけない条件を洗い出して…そこに私たちの知見を使うとこうなりますがどうでしょう?と提案するのが、やりたいところなんです。

ほんちゃん
コミュニケーションが大事ですねぇ!

河原さん
私も「コミュニケーター」なんですよね、きっと(笑)。

3:外との交流で、新しいビジネスを!〜まとめ〜

ほんちゃん
これから色々と要望を聞くことになると思うのですが、これって対応するのは相当大変なことですよね?すごい覚悟が必要なのでは?

河原さん
もうドキドキですよ(笑)!新しい案件が来ると、その度に「大丈夫かな、これ?」って。フードプリントインク.comのサイトオープン以降に来る連絡は、これまでよりも”濃い”ものが多いんです。

ほんちゃん

大変じゃないですか!

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(苦労話って、どんどん出てきますよね)

河原さん
そうですね(笑)。でも、ふたを開けてよかったと思ってます。ビジネスとしてはまだ未知数ですが、これまでと違う着眼点を持てるというのは、とても刺激になりますから。

ほんちゃん
確かに、内輪にならないというのは大事ですよね。

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(その場で印刷してもらった、クッキーたち)

河原さん
作り手の独りよがりにならず、ちゃんと外からニーズのあるものを作るには、しっかり内と外とのコミュニケーションがないと。

ほんちゃん
そういえば、競合する企業はいないんですか?

河原さん
最近は出てくるようになりました。もともとこの分野って食品添加物メーカーさんの範疇ですよね。なので、そのようなメーカーさんが参入してきます。しかし、「印刷」という範疇での開発は、私たちの専門です。ここの強みは、これまで100年近く印刷にまつわる開発をしてきたことに加えて、外のメーカーさんと一緒に”早めから”協力して動いていたというところです。

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(ぐいっと力強く話していただきました)

ほんちゃん

ハラハラドキドキしながらも、早めに外と協力体制を築いておられたのが、強みになるわけですね。

河原さん
そうですね。添加物メーカーさんもそうですし、プリンタメーカーさんとも早めから色々相談しながらやってきましたからね。…ほんとに「コミュニケーター」って名刺にいれましょうかね(笑)。

ほんちゃん
ここから先の展望は?

河原さん
そうですねぇ……また全然別の、世にないようなものをやっていきたいです。また暗ーい期間を過ごすことになるかもしれませんが。

ほんちゃん

なんだかんだで数年後には、今日話した内容と全然違う知見を得て、みんながなんじゃこりゃ!っていうような商品が出来上がるかもしれませんねぇ。

河原さん
我々だけでなく、原料メーカーさん、機械メーカーさん、お客さんも巻き込んでニーズや市場を活性化していくというコミュニケーションをやっていきたいですね。まずはそのきっかけにフードプリントインク.comがなれば。

ほんちゃん
たかがインク、されどインク。身近なところから展望先が見渡せないほど広がる(かもしれない)ビジネスの話まで膨らみました。これからの動きがとても楽しみです!今日はお忙しい中、いろいろとお話をお聞かせいただきありがとうございました!!

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(クッキーに印刷直後、プリンタを囲んで記念撮影)

<まとめ>
「食べられるインク」と聞いて、ただただファンシーなお菓子への使い方しかイメージできなかったのですが、いざ話を聞くにつれてその応用の可能性はとても広いのではないかと思えてきました。そして何より”苦労”を味わってきた先駆者としての、確かな自信のようなものも垣間見えた取材でした。
まだwebサイトは立ち上がったばかりということもあって、これからの動きから目が離せません。もし読者の方でも、何か”可能性”を感じるアイデアや困りごとがあれば、ここに相談してみては。解決のきっかけをつかめるかもしれませんよ。 

 
《おまけ》

取材の最後に、市販のクッキーへの印刷を見せていただけることに。

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なんと、ひらつーのバナーも印刷できております。
ここでイベントカレンダーの画像を印刷していただきましたが、すどん@ひらつーは幅の関係でカットされていました。もうちょっとスリムだったら入ったかも。

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そして、クッキーになっても 怪しさ 存在感を隠しきれないカズマ@ひらつー。
その味は……みなさんの想像にお任せします。

◆関連リンク
ユニオンケミカー
フードプリントインク.com

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