この秋はあったかい日が多いなぁー、なんて思っていたら…
ここのところ急に寒くなってきましたね
そこまでしてカレンダーに合わせてくれなくても、と思う今日この頃
(まだ秋物の服を着ています)
そんなほんちゃん@ひらつーがお送りするシリーズ企画。
「津田サイエンスヒルズ見せて!」
(シリーズ概要はこの記事をチェック!)
(過去の「津田サイエンスヒルズ見せて!」シリーズはこちらから)
20を超える企業・施設が集う場所、「津田サイエンスヒルズ」。
そこには果たしてどんな技術やお仕事があるのか…?
第7回目はここです!
「株式会社 坂本設計技術開発研究所」さん!じゃーん!
サイエンスヒルズ内での場所は、この辺りになります。
入り口すぐ、枚方技研さんの横ですね。
坂本設計技術開発研究所さんのwebサイトでは社長が、
「私たちは表舞台に出ることはありませんが、社会や産業界から必要とされ信頼され、感性豊かで想像力溢れる『燃える集団』を目指します。」
と話しています。
表舞台に立たないが、燃える集団!!なんだかすごいエネルギーを感じます。
さぁー、今回もできるだけ楽しく取材するぞー!
(分かりやすく、ということは忘れないようにします)
では、いってきまーす! !
1:「坂本設計技術開発研究所」って、どんな会社?
2:突然ですが・・・研究所へおじゃまします!
3:“ムダ”が鍛えた技術で勝負? 〜まとめ〜
今回お話を伺ったのは、坂本さん(代表取締役)です。
ほんだ
“設計技術開発”とありますが、坂本さんはいつからこのお仕事を?
坂本さん
25歳のときに会社を作ったから、38年前ですかね。
ほんだ
今の仕事内容は昔と違ったりします?
(いろいろ後ろにも置いてある中で取材します)
坂本さん
いやいや、ずっと“金型”のことをしてますよ。
ほんだ
金型っていっても色々あるのでは?
坂本さん
まぁ、ものを作るときにその型がいりますよね。身の回りにあるもののほとんどが“型”から出来ている。その型を創りだす技術を持っているのがこの会社です。まぁ、裏方ですけど分かってもらえたら。
(奥にはおりひめちゃん&ひこぼしくんが)
ほんだ
確かに、そこを意識すれば普段何気なく生活している中で、接するものの見方が変わるかもしれませんね。
坂本さん
そうそう。ちゃんと型があるから同じ物が製品として作れる、ということですね。ところが、今の日本では誰も就職してくれないんですよ。そこがなかなか苦しいところで…大学にもこの“金型”を学べるところなんてないですし。海外では国の施策として大学でしっかりと学ばせるところもあるくらいだというのにねぇ。
ほんだ
国の施策として、ですか?
坂本さん
そうそう。日本だと就職活動している人にいくら募集をしたって、なかなかこんな零細企業には来てくれない。大学も地域もだれも“金型”なんて分かってくれないですから。でも海外に目を向けると、国の施策として進めているところもあるほど力を入れる分野。この前いった台湾ではコンビニの店員さんが金型の話を1時間もしてくれたんですよ。
(ひこぼしくんに見守られている気分になります)
ほんだ
それほどなんですか!確かに、日本では“金型”って言ってもピンとこない人が多いのでは。
坂本さん
そうそう、だから困ってるんですわ。海外では志願して就きたいと言われる職業なんですけどね。
ほんだ
国の施策にもなっているような仕事に就くというのが、ステータスになるんでしょうね。
坂本さん
まぁ、やってみたら苦しいことも多い、そんないいことばっかりと違うぞ、とは思うんですけども。でも例えば東南アジアの国で言うと仕事してそこそこ給料を貰ったとしても月に数万円ほど。もし日本に来てこの仕事についたら、スキルアップも出来て20万円稼げる…ってなったら、それは行くってなるかもしれんですよね。
ほんだ
そりゃまぁ、頑張って日本に行って稼ぐって…なる人もいるでしょうね。
坂本さん
先だって行ってきた国でも、現地の人は「祖国と家族」のために仕事をするって言うんですもの。彼らの持つビジョンは20〜30年後の祖国の発展と安定した家族の幸せ。遊びとか興味ないですって言いますもんね。今から40年くらい前の日本がそんな感じだったかなぁ。
ほんだ
大阪万博のころですか?
坂本さん
そうそう、「今日より明日はもっとよくなる」が当たり前の時代。ものづくり現場のスローガンが「生産第一」の時代ですね。それでは危ないってことで「安全第一」になり、今では作業員の「健康第一」でしょ。
ほんだ
それと同じということは、東南アジアの方々のガッツは違うはずですね。
坂本さん
英語が話せて日本語も勉強して、PCを駆使できて、祖国のために頑張るとなれば、きっとすごいよね。
(豪快に話がすすみます)
坂本さん
ここはいろいろな仕事をしてるんで、現場を見ながら話しましょうか。
ほんだ
ぜひぜひよろしくお願いします!(1階へ移動しつつ)
(おりひめちゃんとひこぼしくんがエントランスで見つめ合ってました)
坂本さん
たとえばこれ。何だと思います?
(白い固まりを見せる坂本さん)
ほんだ
これは普通の発泡スチロールですよね。
坂本さん
と思うでしょうけど、硬い。指で穴をあけようとすると指のほうが折れる。
ほんだ
うわ、硬い!!これは試作に使うんですか?
坂本さん
そうそう、いろいろ試作するときに削ったり切ったりして使うんです。他にも大学と連携していろいろ試作していくために、医療機器の製造業許可もとったんですよ。
(こちら実寸は数mmだそう。拡大縮小も3Dデータがあれば自由)
ほんだ
医療機器ですか?
坂本さん
例えば女性に多い「ばね指」っていう症状があるんですけど、これは指の腱に問題が生じて起こる。そこを手術するのに、今までは看護師さん2人で手の平を押さえて手術してたそうです。手のひらに看護師さん2人ですよ?
ほんだ
まぁ、手が閉じるとだめですもんね。
坂本さん
そこが、ですよ。医療現場の人件費を削減しつつ、先生だけででもしっかりと安全に手術できるようになったら、もっと広がらないかなぁと考えた。我々は金型の設計をする人間ですから、そこでできるだけ作業が少人数でできるような器具を作ろうと思いまして。
ほんだ
で、できたのが、こちらだと。
(手のひらを開いておける器具)
坂本さん
たったこれだけ、これに4年かけました。これは医療機器のクラス1に分類されるから、作るのに製造業許可がいる、となって許可申請をしたという訳です。
ほんだ
元々これを作ろうってなった発端は何だったんですか?
坂本さん
医療と産業の連携会議があって、そこで先生からの相談があったのが最初。で「こんなんできますよ」って作ったんです。
ほんだ
そう考えると、アイデアひとつでいろいろと解決するものがまだあるんですね。
坂本さん
我々みたいな零細企業でもアイデア一つで医療機器を作れる。そうなると、世界から買わなくてもよくなる。さらには輸出できれば「メイドイン枚方」が世界に出るというわけです。
ほんだ
そうなると、まだまだ可能性は広がりますね。
(この機械は車一台分の大きさでも加工が可能)
坂本さん
この技術があるから、うちの会社に営業が居なくても「こんなもんできないか?」と依頼が来る。さらには、その強みをもっと活かそうと零細企業が集まって企業体(SSTグループ)を組んでいるです。
ほんだ
なるほどー。(2階に移動しつつ)
坂本さん
で、ここがうち唯一の生産工場。蛍光灯が一本もついてないから、休みかと思うでしょ?でもその分窓を大きく設計したから、十分明るい。環境にやさしく仕事してるんですよ。
(巨大おりひめ&ひこぼしがいました)
ほんだ
確かに明るい。よく風も入ってきそうですね。
坂本さん
ここにいろんな業者さんがきて話もすれば、3Dデータも操る。そのデータを下の階に送って、ここで加工したものを見ながら相談できたりもする。
ほんだ
ここでひこぼしくんやおりひめちゃんも作られたわけですね。
(3Dの骨組みになったひこぼしくん)
坂本さん
ひこぼしくんも元々はイラスト(2次元データ)でしょう?それを3次元にするときには、頭の後ろや服など見えない所をイメージしながら不自然にならないようにつくらんといかんのです。
ほんだ
まさに、職人…!!!(3Fに移動しつつ)しかし、実にいろいろな所と連携をして、製品を生み出しているんですね。
(廊下には賞状がたくさん)
坂本さん
特に医療機関とはいろいろ仕事してて、去年は「『“超”モノづくり部品大賞』奨励賞」を受賞したところ。
“超”モノづくり部品大賞…1,900社を超える企業や官公庁、さらには大学・高専などの教育機関などとの連携を触媒とする国内外でも類を見ない組織である「モノづくり日本会議」と日刊工業新聞社による賞。日本のモノづくりの競争力向上を支援するため、産業・社会の発展に貢献する「縁の下の力持ち」的存在の部品・部材を対象にしている。坂本さんが受賞した2014年は、パナソニックの燃料電池システムの実用化や三菱のMRI技術、住友ゴムの石油から作らない自動車タイヤなどが受賞している。
これから一番力を入れたいのが、「メディカルテクノポリス枚方」構想っていうんです。
ほんだ
というと?
(医療関係とはいろいろ仕事をされている様子です)
坂本さん
枚方は人口も多いし、病院もあるし、大学もある。でも、せっかく優秀な人材が育っても枚方から出ていったんじゃしょうがない。そこで、医療産業を枚方で興して、世界に!という意気込みを持って取り組みたいな、と。アメリカではミネソタがそんな具合ですし、日本版が枚方になれば。
ほんだ
枚方市では「健康医療都市」を掲げてますよね。病気を良くするという意味の医療だけでなく、「予防医療」の面も含めて枚方の力を示すというのはいいですね。
坂本さん
いや、何も変わらない。起業したときと今を比べても変わらないし、金型ってそういうものでね。日本のものづくりの基盤技術、基本の“キ”なのは一緒。それを長くやってる間に、技術の一部が医療やロボットに活かせたり、いろいろできた。「何の関係があって?」って思われるかもしれませんけど、“形をつくる”という部分では同じなんです。
ほんだ
確かに。
坂本さん
ある大阪の有名テーマパークの造形を頼まれたときもなんですけど、元々ああいうものは職人が手で作ってた。写真を見て、立体のものをこしらえていく。しかし世の中が変わって、業者が大きな造形を作るとなると立体のデータを使うようになってきた。すると、作られたものが図面通りかどうかなんて、職人はデータを見られない。ここに難しさがあったからこそ、見られるようにするという話がうちにくるようになったんです。
(おりひめ&ひこぼしがずっと見守ります)
ほんだ
ここを探してくるんですか?
坂本さん
webページを検索してたどりつくんでしょうねぇ。なので、初めての取引先が多い。
ほんだ
できない!とかないですか?
坂本さん
できないものはない。人間が考えるおおよそのものは作れるよ。そう断言できる。
ほんだ
名言が出ましたね!(笑)
坂本さん
おもしろいでしょう?ビルみたいな大きいやつも、小さくつくって「これでいいですか?」って確認できる。3Dのデータさえあれば、大きくも小さくも自由。しかも、素材を変えたら硬くも柔らかくもできる。
(途中から経営企画室の村岡さんも加わりました)
ほんだ
そうなると、これまでになかった案件がさらに増えるかもしれませんね。スタッフも大変では?
坂本さん
スタッフは増えてないけど、こういうもの(おりひめちゃん&ひこぼしくんを指しつつ)を作るのって、車を作るのとは違う技術。いつも同じような作業よりも、これ作るほうが面白いですよ?だって、「こういうものを作ってください」がないんですもん。使ったことないような技を使わないとできない。
ほんだ
そうですよね、決まってない作業なんですものね。
坂本さん
だから、どんなものがきても、出来る。出来ないものはない、と。まぁ社員は泣いてるでしょうけどね。レベルアップするってのは、元々の事業以外のことをいくつやるかだと思います。
(3階にもいろいろ製品の見本がありました)
ほんだ
というと?
坂本さん
ムダなアイテムをいくつ持っているか。それが回り回って身になり肉になる。みんなムダな物って利益にならんと削減するでしょ?それだとどんどん技術は小さくなるし、それしか出来なくなる。我々はそういうスタンスで仕事をしていないんです。
ほんだ
ムダが、自分たちの力を増していく材料になると。
坂本さん
それがなぜ出来るかというと、生産設備を持たないから。加工するデータさえ作れば、どこの機械でも動かせるし、確認もできる。
(将来を語ります)
ほんだ
そういう意味で、これからの展開も今までと同じ、ということなんですね。
坂本さん
そやね。あと、今ある計画としては、金型でお菓子を作ろうというのがあるんですわ。
ほんだ
お菓子ですか?
坂本さん
枚方って地元のお土産が少なくってね。なので、これから銘菓を創りだそうとしてるところなんです。もう何年も考えてて、だんだんと「やりましょう!」ってなりつつある。
(笑顔で話は進みます)
ほんだ
枚方の企業が集まればいろいろできそうですもんね。
坂本さん
枚方の企業だけで、15,000社とかある。それだけいろんな事業があるということだから、これらをまとめる地域のリーダーを育てることができれば。
ほんだ
確かに、これからは「まとめ役」の存在が肝心になるのかもしれませんね。今日はお忙しい中、いろいろとお話をお聞かせいただきありがとうございました!!
(おりひめちゃん&ひこぼしくん&村岡さんと一緒に記念撮影)
このシリーズ最長となる約3時間のインタビューとなりました。
そのくらいエネルギッシュで途切れることのない話、その中のあちこちに“金型”が持つポテンシャルへの熱い思いと、今後の日本のものづくりに対する憂慮が見え隠れしていました。ちょうど直前に行ったという東南アジアの話の中には、今の日本に足りない何かが含まれていたのではないでしょうか。
この取材の直後には新しい機材として3Dプリンタが導入されたとのことでした。いったいその新機材でどんな仕事をされるのか、とても楽しみで仕方がありません。
《おまけ》
◆関連リンク
・津田サイエンスヒルズ
・株式会社 坂本設計技術開発研究所