「正直期待されていない」と自分で言っちゃうビオルネ社長が考える、歴史と近未来の融合のまち枚方

枚方市駅周辺再整備インタビュー-タイトル
全7回にわたって、枚方市駅周辺再整備について、各関係団体のインタビュー記事をお届けしているシリーズ企画。

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第5回目の今回はビオルネにうかがい、ビオルネを運営する枚方パートナーシップス株式会社の岡部社長にお話を聞いてきました。

歴史の財産とモダンな開発の融合できる場所

― 駅前の再整備に関してビオルネはどういう形で関わっているのでしょうか?

ビオルネは再整備の①街区〜⑤街区の中には入ってはおらず、枚方市駅周辺再整備検討街区の大枠の中に入れてもらっているという形ですが、直接的には関わっていません。

枚方市駅周辺再整備対象区域
枚方市HP「枚方市駅周辺再整備の取り組みについて」より枚方市駅周辺再整備検討街区の参考図。赤文字で書いたところがビオルネ

ビオルネの前身の施設は、約30年前の駅前都市開発で第三セクターとして始まり、枚方市が資本金を出資して破綻したという経緯もあるので、今回の再整備では大きな投資の対象としては検討されていないのかなと思います。

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現在のビオルネ

― 今の枚方市駅周辺の賑わいに関してはいかがでしょうか?

枚方T-SITEがオープンして約2年経って、商業施設を運営する立場からすると、なんとなく賑わいも一回転して普通に戻ったように感じています。

― 平成25年に出された「枚方市駅周辺再整備ビジョン」に関してはどのように感じていますか?

駅前に来れば「丸一日いても楽しく過ごせる環境」にするならばプラスだと思います。

ただ単に、市役所の移設や合同庁舎をどうするとか商業施設を増床するなどの普通のことをしてもダメだと思います。

枚方らしい目的をもっと突き詰めて、さらに進んでいくような再整備になるのであれば、弊社の役割というものも自ずと決まってくると思います。

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インタビューはビオルネ3階にある「moonlight」の個室にて行いました

― 「枚方らしい目的」とは?

関西では大阪駅周辺の開発がどんどん進み、買い物では梅田が一極集中になりつつありますが、それって消費者にとって買いやすくなっているのかな?と思っているんです。

梅田がどんどんミニ東京化しているのは、進んでいく方向としては逆なんじゃないかと思っているので、そういった意味でも枚方はどうしたらいいのだろう?とは考えています。

私は7年前にビオルネの運営会社が経営に行き詰まって、その後から運営に携わらせていただいたんですが、枚方に古くから住まれている方々が感じているよりも、枚方はポテンシャルが本当に高いまちだと思っています。

なので、もっと枚方は自信をもっていいものをやっていけばいいのになと。

― いいものとは具体的には?

再整備から少し話はそれますが、枚方は歴史のあるまちですし、「枚方宿くらわんか五六市」という胸を張れる立派なイベントもあります。

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五六市のようす

そういった枚方にあるいいものを活かす「ひらかたまちあかりぷろじぇくと」というものを2016年2月に提案したんです。

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― それはどこに提案されたんでしょうか?

前職、そして現職の枚方市長さんに提案させていただきました。

提案したのは枚方T-SITEができる前ですが、僕はまちを明るくしよう・観光地として目覚めましょうとお伝えしたんです。

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「ひらかたまちあかりぷろじぇくと」のイメージパース

今回の枚方市駅周辺の再整備に枚方宿の京街道が入っていないのはすごくもったいないなと思っています。

また弊社の話になるのですが、ビオルネは正直古いです。だけど、良い言い方をすれば枚方No.1の大型老舗店として皆さんに知っていただいています。

皆さんが知っているこの施設をうまく活用して、歴史や観光や名産物の拠点として利用してもらえればいいのではないかと思ってます。

京街道を意識して、江戸時代からの昔の良さと新しいモダンな開発が融和すると、枚方市外から人を呼べる、効果的であり先の将来性が高い開発ではないかなと思っています。

さらに最近では、堤防沿いの淀川河川公園の枚方地区はすごい財産だと思いますね。

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淀川河川公園 枚方地区

― 枚方にとって淀川河川公園は財産だと。

そうです。淀川河川公園を開発して、山まで行かないとできないようなキャンプやBBQなどができれば魅力的だと思います。それが京街道の延長でできるという動線もありますし。

最終的に僕が思うのは、駅前を「日本一インフラに長けたまち」にすれば、すごく魅力的で住みやすくなると思います。

枚方市駅の改札を出てビオルネに来ていただく途中に階段がありますし、枚方T-SITEに向かう途中にもあるんです。駅周辺が陸橋、デッキでつながっているのですが、高低差があるんです。改札が一番低いんですよ。

車椅子の方や高齢になって歩くのがしんどい方も、ビオルネにT-SITEの袋を持ってお越しいただくお客さんはたくさんいらっしゃいます。

逆に枚方T-SITEにもきっと、ビオルネの袋を持って行く人がいる。この行き来をもっとしやすく動線を高低差なくフラットにすることが可能なのはインフラ整備だと思うんです。

駅前のロータリーを含めた道路整備のことで頭はいっぱいだとは思いますが、自転車のコース、歩く人のコース、これらの開発に目を向けるべきじゃないかなと思っています。

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枚方市駅南口駅前広場

2階の高さでつながるインフラが充実したまちに

― まずやるべきことはインフラを整備し、駅周辺で人を動きやすくすることが必要だと。

そう考えています。

うちの施設は駐車場に車を止めて、2階から枚方市駅へ抜けられる動線を市民に提供することができるんです。雨の日でも屋根があるので安心です。近くだと京橋駅からOBPなどにつながる動線に似ていますね。

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関西医科大学の看護学部も4月に開設されますし、関西医大に抜ける道を枚方市駅北口駅前広場から北へ真っ直ぐに伸ばす動線を計画されていると思うのですが、それは本当にプラスなのかなと。

関西医科大学さんのある北側から病院、大学があって弊社ビオルネがあり、京阪の枚方市駅に向かって、枚方T-SITEという道を通しながら、外から来る人には足元を見れば京街道があって、京街道をずっと行けば河川敷につながりキャンプ・BBQなどができる遊び場がある。

こんな組み合わせが全部できるまちってなかなかないと思うんですよ。

― それがビオルネを含む2階でつなげていけばスムーズにいくと。

機会があればこういった動線もできるのではということを、再整備のプロジェクトに関わっている方にお伝えしたいですね。

市外から来られる方はもちろん、実際に住んでる方のアップダウンがより少なく、雨風に打たれずに行き来できる環境は、弊社のビルをうまく活用していただいたら成り立ちますし、なおかつローコストでスピーディーにできると思うんです。

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― なるほど。

枚方T-SITEがオープンしてからビオルネの2階の出入り人数は1割ぐらい増加しました。それをもっと強い動線にしたいということもありますし。基本的に動線を作ったら人は回遊すると思うので。

― アップダウンも少なくして、歩きやすい動線であればということですよね。

そうですね。そのためにはうちの施設もコンセプトを強く持って作り直す必要は当然にあるんですけどね。

― 少し遡りますが、ビオルネの経営をするとなった時に、客観的に見てこの場所はポテンシャルが高いと思われたんでしょうか?

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はじめはポテンシャルが高いというよりは、どこの駅前にもあるものが枚方市駅前にはないなと思いました。

まずはじめにガストに出店していただいたのですが、それは駅前にファミリーレストランが見当たらなかったからです。枚方には20名〜30名ほどの席数のいいお店はたくさんあるんですが、お昼から大人数で集まって行ける大箱のお店が、その当時はあまり見当たらなかった。そういう意味で、ガストは枚方市民の皆さんの需要を捉えて流行ったんだと思います。

その次に出店していただいたのがドコモショップです。枚方に来た当時は「このまち、ドコモショップないやん!」と思っていたんですよ。よくよく調べたらあったんですが、外から来た人はネットでよくよく調べないとわからない場所にあるなと思ったので。

2014年には直営で、枚方市に許可を得てKURAWANKAという名前の雑貨のお店をオープンしました。

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ビオルネ3階にあるKURAWANKA

ちょっとしたお返しやちょっと背伸びしたいようなものが売っているところが当時駅前に見当たらなかったんです。雑貨ブームなのに、それはもったいないなと思いました。

枚方には二代目・三代目と家業を継いでおられる方はたくさんいらっしゃいますから、その家業を継いでいる方々に刺激を与えるような運営ができれば賛同していただき、協力していただけるのかなと、7年ほどここで運営させてもらって思っています。

― ビオルネの役割についてはどう考えていますか?

ビオルネを古くからご存知の方々は、正直期待されていないと思うんですよ。

ひと昔前の外観ですし、だからこのインタビューは少しでも期待されるような内容にしたいと思って話しているんですがね。(笑)

― 昨年オープンされた「moonlight」などは、今後ビオルネが変わっていく仕掛けの1つなんではないですか?

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ビオルネ3階に2017年9月にオープンしたmoonlight

おっしゃる通りで、そのつもりでやってるんですが、やはり大きなまちの全体から見れば小さい話なんですよね。

もっと大きい規模で変えていかないと、お客さんには見てもらえないし気がついてもらえないだろうなと。

例えば、あんなにお客さんが来て賑わう「枚方宿くらわんか五六市」も、たぶん枚方市民の方に「五六市って知っていますか?」と聞いて知っている・行ったことのある方は2割〜多くても4割くらいだと思うんですよ。

逆に枚方市外から来られている方は結構いらっしゃると思います。

ほんとの地元の人は興味があるけれど、ちょっと離れた枚方市民の方は興味がない。市民の皆さんが歴史や観光に目覚めれば、枚方の魅力はもっと強くなると思いますね。

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京街道の枚方宿のようす

ハブステーションの受け皿としてのビオルネ

― 枚方宿や京街道などの歴史的な財産をうまく活用すべきだと。

そう思います。枚方で行うイベントが、どんどん枚方市駅寄りになってきていますが、僕はどんどん枚方市駅から離れていった方がいいと思うんです。勝手ですが、ビオルネがすべての入口となって、枚方市駅にも枚方宿のある京街道へも行けます。

こちらまで来てもらったら、さらに広がりがもてるのに、枚方市駅に寄ってばかりではもったいないと思うんです。

― 京街道は枚方公園までの動線がありますよね。

イベントは利便性も必要ですが、枚方のブランディング上はイベントを枚方市駅から遠ざけるように開催して、人を回遊させて新しい魅力を知ってもらうキッカケにするという「逆の発想」をした方がいいんじゃないかなと。

― ビオルネの入り口でもイベントを開催されていますよね?
うまいもんくらわんかや、音楽イベントでは若い人たちに1年半ぐらい会場を提供してきたんですけど、その中の一人の「強力翔(ごうりきかける)」くんが2017年の12月にメジャーリリースしたんです。彼は手話で歌うんですよ。彼にも言いましたが、超有名になってもビオルネのことを忘れたらあかんで、と。(笑)

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― 「忘れたらあかんで」と言われたことは忘れないと思いますよ(笑)

今ある場所を使ってもらってイベントを開催することは、まちに住む方への直接の貢献度としては高くないかもしれませんが、そういう人が枚方から育っていくという「気持ちのいい印象を与えている」という貢献はあるような気はします。

今あるものをうまく活用して大成功されているのは、ひらパーですよね。目隠しして乗り物にのったり、叫んだら飴がもらえたりなど、仕掛けにはすごい努力をされていると思います。

― ビオルネも今後のいろいろな仕掛けを考えているんでしょうか?

もちろん考えています。

― 再整備と直接の関係はないかもしれないですが、ビオルネの新しい魅力を発信して街を盛り上げていくというところで言えば、その力の入れ具合は星5個中いくつでしょうか?

大きいことは言えないですが…星5つにプラス2つして星7つぐらい力を入れたいですね。

― 再整備に関して官民のバランスはどうお考えでしょうか?

ほんとは官の役割がすごく大きいと思うんですが、再整備などを一気に進めることはマイナスと思う市民の方もいらっしゃるでしょうし、官だけでなく民間と一緒に作るという部分では行政のトップダウンという構図ではない方がいいと考えます。

官民が一緒になって街を作っていけるところが残っていくと思います。

ただ、枚方にはTSUTAYAさんという絶対的なブランドがあります。僕自身もT-SITEが好きなんですよね。

もともと代官山のT-SITEも好きですし、一番好きなのは神奈川県藤沢市辻堂にある湘南T-SITEなんです。関東に出張に行った際に湘南に寄れれば、つい5〜6冊ほど本を買っています。

T-SITEは観光の名所だと思うんです。枚方市駅周辺のマーケットはT-SITEを見たさに広がったと思います。話題のT-SITEを見に、市外からもたくさん来られているはずですよね。

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枚方T-SITEは湘南T-SITEタイプ?って聞いたので実際に行って来た!」より 湘南T-SITEの外観

― どこかの会社や団体に求めることはありますか?

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うちは小さな会社なので、大きな電鉄さんである京阪さんと、日本の新しい産業を作ったTSUTAYAさんに応援していただきたいです。(笑)

枚方市駅のリニューアルに伴って京阪百貨店のテナントがなくなる際などは、事前に「受け皿」としてビオルネに声をかけていただきたかったというのはありますね。ビオルネに声をかけていただければ、まちとして失うものが少なかったのかなと。

これは私たち自身のコミュニケーション不足でもありますし、企業の利害関係もあるので難しい部分はあるとは思うんですが、どこかでそういったコミュニケーションが密に取れれば、枚方市として失うものを少なくできますし、連携をうまくとれればビオルネももっと明るくなると思います。

それは実際に枚方に住んでる人の利便性が失われないことにもつながります。

― 受け皿としてもビオルネは活躍できるかもしれない、と。
そうなんですよ。組織的には小さいですが、判断と決断のスピードは一番だと思っています。

枚方市駅は絶対的なハブステーション(拠点駅)だと思うんです。通勤に対しても、学校に対しても、病院に対しても拠点になる場所なのに、この活用方法を贅沢に見逃していると思うんです。

利用者の多い駅なので、枚方市駅周辺に来る人たちに対して「どうやってこのまちに1分でも長く居てもらおうか」を考えていくことが必要だと思います。

近未来と歴史の融合が枚方の今後のポイントになるのではないでしょうか。
(了)

以上、枚方市駅周辺再整備について、ビオルネを運営する枚方パートナーシップス株式会社の岡部社長にお話をうかがいました。

次回は枚方T-SITEを手掛けた株式会社ソウ・ツーのインタビューをお届け予定です!

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