\北大阪商工会議所×ひらつー/
地区内における商工業の総合的な改善発展を図り、社会一般の福祉の増進に資することを目的としている商工会議所と、枚方の地域情報を日々発信している枚方つーしんのコラボ企画!
北大阪商工会議所。
一度は聞いたことがある人が多いとは思いますが、「一体何をしているのか?」「どんな企業が参加しているのか?」といったことまで知っている人となると数はぐっと減るのではないでしょうか。
少しでも身近に感じていただけたらと、北大阪商工会議所に入会されている企業を月に1度のペースでご紹介していきます!
■過去のコラボ記事
4回目の主人公は、家具のまちとして知られる枚方市長尾家具町の枚方家具団地協同組合。理事長の藤川龍磨氏(67)、副理事長の大嶋英光氏(71)、同じく副理事長の前田佳孝氏(52)の3方に話を聞いた。
枚方家具団地は、今からちょうど60年前、大阪市内の家具製造工場をはじめ、材木・塗料・金物など家具に関わる企業や職人が集まって作られた。
家具の需要が高まるにつれて、製造直売として工場の前で小売が始まり、小売の店舗も集まるようになって発展してきた。全国でも珍しい消費者と直接つながる“家具のまち”だ。
しかし、近年、大型家具チェーン店の影響などを受け、ピーク時25店舗あった小売店は15店舗に減少。組合は危機感を募らせている。
そんな中、2027年度(令和9年度)に予定されている新名神高速道路の開通を新たなビジネスチャンスと捉え、組合が一丸となって家具団地の新たなまちづくり計画が進行中だ。
開通後は名古屋圏からの来客も見込まれ、家具のまちをPRする絶好の機会となる。
安価で求めやすいが、飽きたら数年で捨ててしまう家具ではなく、今の時代に求められているSDGsも意識しながら、ホンモノの家具を修理したり、作り替えたりして長く使う“循環型ライフスタイル”を提案。
枚方家具団地が、家具やインテリアの情報発信基地となり、「家具といえばここ!」と国内外から言われるような、いわば“日本の家具の聖地”となることを目指す。
昭和時代は、婚礼家具を載せたトラックで渋滞も
まずは、枚方家具団地の歴史から振り返ろう。高度経済成長期の真っ只中の1962年(昭和37年)、大阪市内にあった家具の製造工場などが、工場の騒音やスペースなどの問題から郊外のまとまった土地を探していた。
当時、枚方市長尾地区は、まだ山林や竹藪が広がっていたそうだが、国道1号線が整備される予定もあり、今後の発展が見込まれるとして、この場所に家具の一大工業団地を作ることが決まったという。
面積は16万坪、実に甲子園球場10個分以上の広大な土地を確保。当時270社が計画に賛同し総額13億円を投入して造成された。
当初は、家具の製造・卸を行う工場が集まる街だったが、次第に小売の需要が高まり、工場の前で小売も行う会社が出始め、小売の店も他から集まってくるようになって、家具のまちとして発展していった
ピークは昭和50年代。大阪や京都などからタンスや鏡台などの婚礼家具を買い求める客で賑わっていたという。
当時を知る大嶋副理事長は「大安の日は、家具団地内の道路は、婚礼に出すトラックがずらーっと並んで渋滞だった」と振り返る。
しかし、時代の波が押し寄せる。
マンションなど集合住宅が増え、ライフスタイルが変化。婚礼家具の需要も減っていった。
住居の収納機能も充実し、特にタンスの需要が減ったという。
加えて、大型家具チェーン店が増加し、消費者のニーズが低価格の家具に移り、家具団地は大きな打撃を受けた。
ピーク時に25店舗あった小売店は、代替わりで閉店に追い込まれるなどして15店舗に減少。
組合の加盟社も、約150社から49社と、3分の1の規模になった。
新名神開通で新たなビジネスチャンス「家具のまち」PRを
組合として危機感を募らせる中、新たなビジネスチャンスが到来した。
2027年度(令和9年度)に予定されている新名神高速道路の開通だ。名古屋方面や神戸方面からの交通アクセスが良くなり、新たな誘客の絶好の機会となる。
高速道路の開通にともなって、周辺の道路整備を含め街並みも大きく変わる。
組合では、2015年(平成27年)に「枚方家具団地ネクスト委員会」を立ち上げ、新たなまちづくりの検討を始めた。
枚方家具団地の魅力・強みは何なのか、数十年先を見据えてどのような戦略を立てるのか議論を重ねてきた。
枚方家具団地がある場所は「枚方市長尾家具町」。
地名に「家具」という名前が入っているのは、全国的にも珍しいという。
組合によると、枚方家具団地を作る際に枚方市に要望してこの地名が付けられたそうだ。
地名にもなっているまさに「家具のまち」。
全国でも、これだけ大型家具小売店が集まっているところはない。
これまでのように個々の家具屋で勝負するのではなく、組合として一丸となり「家具のまち」をしていくことになった。
その先陣を切る形で出来たのが組合の新たな事務所。
旧事務所の「カグニティ枚方ビル」は、道路整備に伴って立ち退きが必要となり取り壊された。
それに代わる新たな事務所が、2021年11月に移転、オープンした。
これまでの鉄筋コンクリートの建物とはうって変わって、国産のヒノキとスギをふんだんに使い、木のあたたかみや魅力を活かした事務所に生まれ変わった。
明治から昭和初期にかけて講堂やドームなどでよく使われた「木造合掌トラス構法」と呼ばれる伝統技法が採用されているのも一般の建物では非常に珍しいという。
コンセプトは、「小さくても本物」「木を魅せる配慮」。家具のまち、枚方家具団地の新たな一歩に相応しい建物となった。
“ニトリ、IKEA”のその先へ。新たな事業戦略
個々の店舗で勝負するのではなく、家具のまちとして売り出すにあたって、組合としての新たな事業戦略も検討中だ。
責任者を務める前田副理事長は、20年後、30年後を見据えて今こそが変革のチャンスだと考えている。
「近くの国道1号線沿いには、ニトリモールがあり、このまま何もしなかったらジリ貧になる。多くの家具屋が密集している枚方家具団地は潜在能力があるまち。その特徴を活かし、新たな発想でニトリやIKEAに出来ないことをやっていきたい」と語る。
実はこれまで、家具屋が隣り合っていることで、価格競争になっていた面もあるのだという。
このため、互いにタッグを組んで、全体としてプラスになる仕組みを作る必要がある。
事業戦略の柱として検討されているのが、枚方家具団地内にある駐車場跡地に数年後に新たなモールを建設し、テナントを誘致する案だ。知名度が高い国内の大手家具メーカーや全国の家具産地から、まだ知られていないこだわりの家具作りをしているメーカーなどの誘致を検討。
その狙いは、家具の購入を検討している見込み客の集客だ。
単にイベントをやって人を集めるのではなく、収益につながる集客が必要だからだ。前田副理事長は「以前は『小売の立場からするとメーカーが出てくるのは困る』といった考えもあったが、今は違う。小売店とメーカーとが一体となって、メーカーの知名度を活かして集客していけば良い」と話す。
「日本にはまだまだいい家具があるのに消費者に知られていない。モールに来てもらって、ぜひ質感の違いや座り心地の良さなどを見て触れて感じてもらいたい。そして、見込み客の集客を今の20倍、30倍にして、枚方家具団地全体の売り上げを伸ばしたい」と目論む。
ほかにも、アイデアはたくさんある。
例えば、高価な家具を購入しやすくするため組合が保証する形で10回などの分割払いができる仕組み。
家具団地の商品の共同配送システムの導入や、共同で家具の修理や引き取りを行う事業。
このほか、例えばダイニングテーブルセットとソファを検討している客に対して、実際に部屋の中に配置した場合のイメージを3Dで提案し部屋全体をコーディネートする事業などさまざま計画中だ。
そして、モール事業が成功すれば、枚方家具団地の新たなシンボルとして、高さ12メートルの巨大な椅子型のモニュメント「メガチェア」を家具団地の玄関口に設置する案も検討されている。
“捨てない家具〟循環型のライフスタイルを提案そして、枚方家具団地を“日本の家具の聖地〟に
今年、組合は設立60周年の節目を迎えた。
今後大切にしていきたいコンセプトとして、SDGsを意識した“捨てない家具”、“再生可能な使い継げる家具”を提案。
安価な家具を買って数年で捨てるのではない。
例えば国産の木を使った家具を大切に使ってもらい、いらなくなった時には、塗装をしたり補修をしたりして再度売り出すといった新たな循環型のライフスタイルだ。
子どもたちにもそういった考え方を伝えていこうと、枚方市内の小中学校の教室向けに、これまでのスチールを使った机と椅子の代わりに、国産材を使った木製の机と椅子の導入を提案している。
スチール製に比べると導入時の価格は高くなるが、削り直すなどして、何度も再生して長く使える良さがある。
タブレット学習など今の教育環境にあった机の大きさや形状などを枚方市役所の方に紹介いただいた国際的なデザイナーとともに検討を進めている。
藤川理事長は、50年後を見据えた枚方家具団地について
「まちづくりは、家具屋だけでできるものではない。商工会議所の紹介でまちづくりの専門家にも加わっていただき、他地域の成功事例も学びながら検討を進めている。
枚方家具団地が、日本の家具やインテリアの情報発信基地となり、新たな文化を生み出す。
国内はもちろん、外国からの観光客からも『家具といえばここ!』と言われるような、いわば“日本の家具の聖地”を目指す」と意気込む。
枚方家具団地協同組合
〒573-0102
大阪府枚方市長尾家具町1丁目2番地1
TEL:072-856-1463
枚方家具団地協同組合公式サイト
■関連リンク
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