全7回にわたって、枚方市駅周辺再整備について、各関係団体のインタビュー記事をお届けしているシリーズ企画。
― まず北大阪商工会議所についてご存知ない方もいらっしゃると思うので、そこからご説明いただければと。
(谷本理事):商工会議所は「商工会議所法」という法律に基づいて設立されている「地域の総合経済団体」です。
具体的に何をやっているかというと、主に地域の中小企業の事業者さんの経営の支援であったり資金の相談にのったりと、事業活動の支援や地域産業の活性化につながる活動をしています。
又、もともとの設立の主旨として「地域の商工業者の意見を吸い上げて行政に提言する」という大きな役割がありまして、市や府や国へ地域の声を届けています。
そういった活動の中で、まちづくりや地域のイベントであったり、賑わいの創出というようなこともやらせていただいています。
市民の方にもっとも身近なところで言いますと、簿記やそろばんの検定試験や各種講習会やセミナーなど、一般の方にもご利用いただけるものまで、幅広い事業を行っているのが商工会議所になります。
ー 皆さん「北大阪商工会議所」という名前には馴染みがなくても、実は身近に触れていることがあるかもしれないということですね。
(宮田委員長):昭和50年(1975年)、山村市長の時に枚方市駅前再開発事業が完成した時から考えると、今の駅前再開発は正しくは「再々開発」になるんです。戦後、2回目ですね。
そんな中で枚方市市民会館大ホールが老朽化してきたので、作り直して欲しいという市民からの要望が高まり、近年になって、ようやく枚方市立総合福祉会館(ラポールひらかた)の向こうに(仮称)枚方市総合文化芸術センターを作るという整備計画が公表されました。
ただ、以前から市民会館が移動すれば駅周辺はどうなるのかという質問は市議会からも出ていました。
現在の枚方市市民会館
枚方市立総合福祉会館(ラポールひらかた)近くの(仮称)枚方市総合文化芸術センター建設予定地
(宮田委員長):そして、枚方市として市民会館がなくなったあとに、どういうまちづくりをしようかというのを1年かけて検討したのが、平成25年に打ち出されたビジョンなんです。そのあとが全然動いていなかった。
枚方市総合文化芸術センターを建てるだけでもお金が相当かかります。お金の段取りも含めて、様々な調整に時間がかかってしまった結果だとは思いますが。
そうすると、枚方市駅前ばかりにお金を使うのはどうなんだ?という声が出てくる。長尾はどうなるんだ? 津田はどうなるんだ? という声が、市会議員の先生も含めて出てくるということは当然にあります。
そんな中で民間の開発が進み、ソウ・ツーさんが枚方T-SITEという、あんなに立派なビルを建てられたというのが今の現状だと思います。
それと、枚方は今、人口が減っていっていますよね。それに対してどこかで歯止めをかけるために、駅前に例えば子育てができるような所があれば、若い人がもっと住んでくれると思うんです。そういうようなものも作っていくべきだと思います。
建物という「ハード部分」を造るだけではなくて、どういう賑わいをつくっていくのかという「ソフト部分」が大事ですよということは、具体的に「この場所にはこういうものがあればいいんじゃないですか?」という案も作ってお渡ししています。
というのは各々の地権者の方、そこでお商売されている方や土地や建物を持っておられる方は、当然「今自分が持っている資産でどう収益をあげるか」というのがポイントになります。
ですが商工会議所という立場から言うと、それだけではなく「まちづくり全体」の人が集まれる施設や仕組みを考えなければいけない。
1人1人の意見を聞き過ぎると、個人の経営の話に終わってしまって、全体のまちづくりの話をすることは難しい。
まち全体を人が周遊できて、商いができるような形の賑わいをつくることで、枚方市駅周辺でお金儲けをしてもらえて、資産価値が上がってくる。
今回の枚方市駅周辺再整備の規模の開発をするとなると、土地によっての役割を考えなければいけません。
どの場所にどんな施設が必要かなどは、全体のまちづくりの話をした上で、地権者の皆さんに「まち全体のことも一緒に考えていきましょう」と商工会議所が言わなければいけないんです。
枚方市駅を利用されている方たちに、枚方市駅周辺のまちにどんどん出て来ていただいて、そこで時間を過ごしてもらったりお金を使ってもらったりというようなまちにしていかなければならないのは、課題の1つでもあります。
そのためには例えば川原町商店街なりの役割があったり、官公庁をはじめ、京阪さん、枚方T-SITEさんなど皆さんそれぞれの役割があると思いますので、それぞれの立場で声を出していただいて、それを全体で考えていくというのが一番いい形なんじゃないかと考えています。
もちろん乗降客の方だけではなく、枚方市駅周辺にお住まいの方を含め、多様な人たちに応えていくまちにしていきたいなと。そういうところが課題と目指していくところの両方になっていくのかなと思います。
枚方市駅の駅前の混雑の解消は課題のひとつですが、メインではないんですよ。
毎日約10万人が出入りしている枚方市駅にはサラリーマンもいれば学生もいる、子育てをしている人もいる。こういう人たちを地元で回遊させるためには仕組みがいるんですよね。
まち全体の話をして、それぞれの土地の役割があって、ここに商業施設があればいいね、ここには病院がいいね、子育ての支援の施設がこんなところに入ればいいね、ここに若い人たちが買えるマンションがあったらいいね、とそういうビジョンを元にまちを作っていく必要がある。
(宮田委員長):今、私たちが言っているのは1年・2年の話ではなく、50年・100年先の枚方のことを思えば、そういう仕組みから考えていかなければいけないという話なんですが、市長さんにも各部署の担当部長さんにしても任期というものがあります。
だからどうしても目に見えるハード部分は着手するものの、今話しているようなソフトの部分はなかなか結果として見えにくいので難しいんだと思います。
なので民間がいくら提案し部分的には開発できても、まちづくりの話をしようと思えば、やはり行政主導で絵を描かなければいけない。今はちょっと変わってきて、民間の意見を取り入れることで補助金が出る仕組みもできています。
(谷本理事):若い人の意見という部分では、民間の、それこそひらつーさんのようなまちに関心のある方々にリーダーシップをとっていただいて、地道なところからまちづくりの検証をどんどんしていただきたいですね。
そういったことから始めていって、意外とこういうニーズがあるなとか、こういう仕掛けをしたらたくさん人が来るねとか、新たな課題が見つかって試行錯誤を繰り返し、じゃあ周りのビルにはこういう施設を入れていったら面白くなっていくんじゃないかとか、ソフト面からのまちづくりが始まっていって、それだったら行政もこんなことができますよとか、こんな建物がいいですねとか、図書館を作りましょうとか、どんどんつながっていく。
こういった成功事例として取り上げられているまちは全国にもいくつかあって、我々としても枚方にそうなって欲しいですし、そうありたいんです。
そういうところから始まっていくのが、地に足のついたまちづくりのような気が我々はしているんですよ。40万人都市の顔として、枚方市駅という顔をちゃんと将来に渡って持っておくためには、そういうことからじゃないかなと。
そのような活動を一緒になって支援していくことも商工会議所の役割だと考えています。
枚方つーしんが運営するコワーキングスペース「ひらば」
僕らはそういう人たちにバトンタッチして、若いまちづくりに関わってくれる人をもっと輩出したいんです。
若い人たちの小さいグループだけではなかなか声が届きにくいかもしれないですが、私たち商工会議所が間に入ることで、行政に対して意見を伝えやすくなります。そういうことが、僕たちがこれからさらに力を入れていくべき仕事だと思っています。
枚方まつりでのプロレスのようす(→詳しくはこちらの記事で)
枚方市外に本社のある会社だと、枚方にお金が落ちるのはパートで働く人の人件費だけになる可能性があります。ですが「枚方市、寝屋川市、交野市」などでご商売されている方が儲けたお金は地元で循環します。
そういう地元での好循環がまちを活性化させてくれます。
ー なるほど。
(谷本理事):若い皆さんもご自身の仕事だけではなくて、例えば自分の仕事以外で地元の仲間とまちづくりを話し合うような集まりに個人的に参加してもらって、意見交換をして、それを自分の仕事に持って帰ってもらい活かしていくような循環みたいなものをどんどん作れればと思います。
そこはやっぱり若い人に期待する部分で、頑張ってほしいなと思います。
ー 枚方市駅周辺再整備ビジョンの中には、うかがった内容に出てきた部分も採用されていると感じたんですが。
何百億円というお金が枚方市駅周辺に落ちていくわけですから、自分たちが住みやすいまちにしないと損ですよ。
(宮田委員長):ずっと星5個でやって来ました。ただ、北大阪商工会議所というのは「枚方市、寝屋川市、交野市」なんです。今回の話は枚方の問題なんですよ。寝屋川市、交野市の方から見たら、ちょっとズレるので、そこがちょっとしんどいところではあります。
ただ、商工会議所も時代に合わせて変化していく必要がありますし、新しい商売人さんにも入っていただこうと思えば、こういうまちづくりに関することもやっていかなければならないと思っています。
もう1つは、たくさんの人を動かしている関西医科大学さん。民間の皆さんですが、まちづくりの担い手として頑張ってくださると思っています。
市駅周辺にはオフィスもあって、そこで働いている人たちは仕事が終わったら飲食店に行くもよし、共同で借りられるような会議室のようなところがあって、そこで勉強会やまちづくりの話をして交流が生まれる。
そこに枚方市内にある大学の学生も一緒に入ってきて、社会人と学生の交流の場が生まれ、そのコミュニケーションによって新たなビジネスや商売に発展していく。週末には多くの人々が公園でのイベントに参加したり、ショッピングや飲食を楽しみ、健康づくりなどもできる。
そんな風に循環していく国際性も含めた多様性、枚方にはそういったポテンシャルが十分にあると考えていて、そういう循環をいかに作れるかを商工会議所としては検討しています。
以上、枚方市駅周辺再整備について、北大阪商工会議所の谷本理事と地域振興委員会の宮田委員長にお話をうかがいました。
北大阪商工会議所