★ビックリマン好き
★ガチのシンガーソングライダー
★生物大好きJK&先生
と街ブラしてきましたが、第4回のゲストは……
摂南大学枚方キャンパスの伊藤優先生と広報の吉田さんです!
摂南大学枚方キャンパスの広報などを担当する職員さんで、構内を一緒に歩くとすぐ誰かから声をかけられる人気者。伊藤先生の影響で植物についても詳しくなった。
ひらつーのイメージキャラクター「お枚の方」こと東中振たま。
努力家で人の話に素直にリアクションできる女の子です。でも油断するとすぐセブンイレブンの新商品の話をしてくるので油断できない。
今回は撮影担当のひらつーメンバー。そっくりさんの目撃情報が後を絶たないほど、よくいるヤツ。ドッペルゲンガーが枚方市内だけでも現在3体が確認されている。
まずは今回の記事中における内容のテーマ↓
★葛と檜と切られた悲しみと
★コブニレって樹木はご存知ですか?
★シダってめっちゃ実験しやすい
★カスマグサの名前の由来
★金木犀に蝿がたかる理由と香りのお話
★北山公園にてヤマモモのオスメスについて知る
★椿と山茶花の見分け方?
★コルクって木の名前じゃなくてコルク質のことなんだって
★カンフル剤のカンフルって何?
★腎臓病の薬を作る葉っぱ
★家具団地の溝の中は植物の宝庫
今回は摂南大学内から、北山の方をぶらりしてくるルートです。開始早々からぶっ飛ばしていますので、お付き合いいただけますと幸いです!
「よろしくお願いします。それでは大学内から回りましょう。学内には葛もございますから、せっかくだから葛を見ていきましょうか」
「よろしくお願いします!くず!?葛湯とかのくずですか?」
「そうそうそう。葛は葛根湯とかで薬学部の授業でも大事なんですけど、葛って雑草的性質をもってるんですよ。アメリカでは葛は侵略的外来種として大騒ぎになってるんです」
「へぇ〜」
この時の雑草的性質は、望まれないところに生育・繁殖する植物の性質のことを指しているんじゃないかなぁ??
侵略的外来種っていうのは、人間の活動によって国外から運び込まれた種(外来種)が、その地域の環境や生物の多様性を損なうほどの繁殖をしたりすることですよ
「そんな葛が学内のフェンスに絡みついて残ってます。
その場所を摂南大学の『ここで葛を学生に見せましょう』というスポットにしたので案内します。
葛って三小葉なんですが、三小葉ってわかります?葉っぱが3枚になっているんです。
そのうち、いただきにある頂小葉がね、本当か嘘かわからないですが、日光に向けて方向を変えるんだって。(→解説サイト)
その様子を動画に収めたいから、(大学で)定点カメラ買ってくれません?」
「笑」
「先生はいつも歩きながら植物を見ているんですか?」
「冬は樹皮とか見ながらあれかな?これかな?とか想像を膨らませてます。最近の若い子はスマホばかり見てるけど。僕は勉強してるからってのもあるけど、とにかく気になるし。
ほらあそこ!」
「あのフェンスのところ……で、葛がこのヒノキにかかってるので……
あ、切られてる!なんで切られたの?うそ!?」
「誰でしょうね?」
「馬鹿野郎〜。これ誰が切ったの?」
「自然に…「あれ自然ちゃうで、ガッツリ切られとるやん笑」」
(ガッツリ人工的に切られてるヒノキと葛を見て悲しんでる伊藤先生)
「でもご安心ください、葛というか我々にとって重要な葛根湯は根っこのところですから。上が切られようとなんだろうが栄養が下に行ってしまえば問題ないです」
「(笑)」
「いやぁ〜いきなり想定外でした。
吉田さん、『ヒノキを切っても葛は切るのはやめてくれ』って担当の人に言っといて。
でもヒノキはやっぱり香りがいいですよ。
檜風呂っていうくらいですし。台風の時に折れたんですが、すごい良い匂いしましたよ」
「この木もね、すごい面白い。コブニレっていう木なんだけど、珍しくて」
「どういうところが珍しいんですか?」
「ここにこう……翼(よく)っていうんですけどね、出っ張りができるんです。
これをコブって呼んでるらしくて、植物の種類としてはハルニレかなにかの仲間なんですけど、コブができるのはフォルマ(品種)っていう扱いなんです」
「へぇ〜」
コブニレの翼(よく)っていうのは、この記事の後半に出てくるコルク質で出来ている枝の膨らみのことを指していて、存在する意味はあんまりわかってないそうです
「なぜかっていうと軽微な違いなんです。日本人とアメリカ人が微妙に違うみたいな……って言っていいのかわからないけど。八重咲き品種なんかはフォルマで区別しているのが多いです」
「お米のコシヒカリとあきたこまちみたいな?」
「たぶんそういうのもそういう風にわけてるんじゃないかな」
「これはけやき。非常に樹形が綺麗なんで、冬が一番目立つ。
逆三角形をみたら絶対けやきだといっても過言じゃない。
けやきの樹形は一番綺麗。
ここのけやきは綺麗なんだけど、少し後ろにあるけやきは高圧電線にひっかかるから、見るも無残な姿にされちゃいましたが(笑)」
「けやきは神様ですからね、大阪の南部では」
「そうなんですね」
「けやきの神。だんじりというのは、元々けやきの木で作っていて、その神様を祀るというお祭りなんですよ」
「それを切っちゃったと(笑)」
「神様も高圧電線にはかなわん(笑)」
コケはあんまりわからんと言いながら芝生をまさぐる伊藤先生。そこで見つけたのが……
「これが一倍体(本体)、でこれが二倍体(先っちょ)」
「なんか習ったような単語!」
「二倍体はゲノムセットを2つもってるの。我々人間もゲノムセットは2つもってる」
「へぇ〜」
倍数体(一倍体・二倍体)はゲノムセットの数。人間はお父さんお母さんから1つずつゲノムを貰って2個のゲノムセットになるんですが、植物はいろんな倍数体があります。
例えばバナナは3倍体、じゃがいもは4倍体だったり
倍数が増えるとどうなるかというと、細胞とか器官とか全部が大きくなるそうですよ
「こういうコケはね、非常にややこしいですけど本体が単相世代(=配偶体)といって、nが1つしかない、ゲノムセットを1つしかもってない。我々でいうと精子とか卵子とかの世代が目に見えているんです。
だけどコケからシダ、被子植物や裸子植物に進化する過程で、2n世代という複相世代(=胞子体)のサイズがどんどん大きくなるんです」
「相同ってわかります?相似と相同って生物で習うんですけど。相同っていうのは眼と眼を比べること、相似っていうのは眼と鼻を比べること、みたいになってて。ここらへんに映えてるコケはパッと見ではそこらへんの雑草(被子植物)に似ているんですけど、他人の空似、つまり相似ではなく、全然比べているものが違うっていう。こういうのが生物学」
「今ちょうどシダを胞子から培養しているので参考になります(※すどんは最近ビカクシダを胞子培養しはじめたのである→ブログ)」
「あ、そうなんですか!そんなことやってるんですか(笑)シダってのは一番面白くて、精子と卵子をもってる単相世代と、それが受精してできた複相世代、2nが別々に個体として眼に見えるので、実験系を作りやすい」
「そんな利点が!」
「(生えてる木を指さしながら)こっちだと花粉からDNAをとるので大変なんだけど、シダだったら両方からDNAをとれるから昔から研究されてるんです」
学校内には薬草を育てる植物園がありますが、校内の道端にも薬草になりうる植物は生えています。景観のこともあって、樹木もたくさん植えられてるし、シダやコケもあるので薬草について学ぶ学生にとって、教材はそこら中に転がってるとも言えそう。
でも別に摂南大学だから、というわけじゃなくて大学なら大体これくらい植物があるんじゃないかと思いますし、現在大学に通っている方は意識して校内の植物を見てみては!新しい扉が開けますよ!
「学校前はもうなんにもないね、こんな何にもないところに繰り出して何をするんだっていう」
「あ、ほらここにカスマグサおるで。花咲いてるかな?ピンクの花ある?」
「これは複葉っていって、いろんな葉っぱが1枚に、小葉がいっぱいついてる。マメ科なんですけど。花咲いてるはずなんですけど、ないかなぁ〜?あったら面白いんだけどなぁ〜」
「絵的に面白いよそこのお二方。学生に見られたらただの怪しいやつ」
「笑」
「クイズです。カラスノエンドウとスズメノエンドウって植物があるんだけど、どっちが大きいでしょう?」
「カラス!」
「でしょ?カラスとスズメの間(あい)の子だったらどうでしょう?カラスよりも大きくないんだけど、スズメよりも大きいやつがいるとしたら」
「ハト!」
「それは人はハトとは名付けずに、カラスとスズメの間の、カスマグサってつけたらしい」
「素敵な豆知識」
「ピーピーならすヤツですよね、この草」
「そうそうそう」
「金木犀ってすごくいい香りがするじゃないですか。これって実はすんごい複雑な匂いの集合体で、蝿がくるんですよ金木犀に。なんで蝿がくるんでしょう?」
「美味しそうだから」
「ぶー!うんちの匂いがするから。スカトールが混じってるんです。だからいい匂いなんだけど、いい匂いじゃない匂いも含めていい匂いなんです」
「混じり合って。面白いですねー!」
「面白いなって思って、『匂いを科学する』っていう子ども向けのイベント時に準備したんです。
でもそのイベントは小学生が1人もこなかったんです」
「大人の方1人だけしかこなくて(笑)」
「いい匂いも分解するとよくない匂いも入ってるということです。
それと反対の原理でいうと、パクチーって結構嫌いな方多いじゃないですか、あの香り。
実はパクチーの香りにライムの香りを混ぜるとコーラの元の香りになるんですね」
「実験してみたい!」
「ねぇ〜!」
「実験したんですけど、小学生が1人もこなかったから」
「笑」
「あのイベントめっちゃ準備したのに(笑)
すごい考えたのにさ、薬学部全然関係ないやんとか思いながら」
「ちょうどその日が近くの小学校の運動会の日でね、しかも台風がきてたからってのもあると思います」
「もうあれはヤだな」
工場や倉庫が多いところを通りましたが、やはり植物は身近というか、よく見たらいろんなモノが見つかりました。
金木犀なんかはいろんなところにあって、香りが特徴的ということもあり認識されやすい植物なんじゃないでしょうか。
そんな金木犀の香りの豆知識は、今度の飲み会あたりで使ってみようと思います。
(そのまま歩いて、以前紹介した北山公園までやってきた我々)
「あれはヤマモモじゃない?樟葉駅前からの道沿いに街路樹としてたくさん植えられてる」
「ヤマモモって前の植物園見学の時にジュースをいただいたやつですか?」
「そうです。どっちかな?オスかな?メスかな?」
「この木自体にオスとかメスとかあるんですか?」
「はい、ヤマモモはオスメスあるんです。オスっぽいな、こんなに実ができるわけないもん」
「オスメス!」
(ヤマモモの雄花序)
「ヤマモモって結構花粉が飛ぶんですって。
だから植物園はヤマモモはメスの木だけ植えてあるんです。
勝手にオスの木の花粉が公園とかから飛んできて実がついているんです。
わざわざ受粉木を用意する必要がないんだって」
「なるほど……」
「この公園すごいね。植物に全部ラベルついてるやん。なんもすることないやん」
「あ、椿がありますよ」
「椿はサザンカと似てるんだけど、見分け方としては花の落ち方。椿は花ごとボトッと落ちて、サザンカは花びら1枚1枚落ちるんですって。
ボトッと落ちると昔の侍さんからは首を切られたみたいに見えるから縁起が悪いと言われていて、椿よりもサザンカが植えられていることが多いです」
「縁起が悪い(笑)」
「摂南大学の中もサザンカばっかりなんですよ。だけど薬の話をするには、椿オイルの話がしたいのに椿がないんです。
だからサザンカだけど『これを椿としたら〜』とか言って説明してる。
しかもこないだ調べたら似てるけど2つの種は言うほど近縁種じゃないっぽい」
「ここの椿もボトッと落ちてますね」
「Camellia Japonica Linné(カメリアジャポニカリンネ)って札には書いてますね」
「椿は種子から椿油がとれます。椿はカメリアっていう属名なんですけど、カメリアチネンシスになるとお茶、カメリアジャポニカだとこのヤブツバキ。
ではジャポニカのあとについてるリンネって名前はなんでしょう?」
「リンネ?」
「3つ目の部分はオーサーネームといいまして、学名を決めた人です。
かの有名な植物学の父といわれるスウェーデンのリンネさんがつけたよって言う意味です。
リンネさんはスーパー有名人なので“L.”って略されることも多いです」
「へぇ〜」
上のリンネさんの正式名称はカール・フォン・リンネ。
Wikipediaによると、同名の息子と区別するために「大リンネ」とも言われるそうです。大(笑)
分類学の父と呼ばれていて、例えば♂をオスとすることにしたのも大リンネの功績の1つなんだって
「僕が植物を新しく見つけた時、Itoってやろうと思ったらもう既にItoは使われてて。
しょうがないから名前の頭文字をつけてY.Itoにしようとしたらそれもダメ。
Y.Itoがダメだったらもう僕はYu.Itoってフルネームを使うしかなくて困りました(伊藤先生のフルネームはいとうゆう)」
「ニシキギもさっきのコブニレと同じく翼(よく)があるんです。コルク質の翼が。こういうのをコルク層っていうんです。
ワインのコルクって何でできてるかって知ってます?」
「うーん」
「コルク樫っていう樫の木から出来ているんです」
「ちょうど僕もシダを植えるためにコルクを購入したところで、異様に軽くて感動していたんですが、あれは樫の木だったんですね!」
「コルク樫っていうシイカシ類で、コルク層がやたら発達する木なんです。そこからコルクはきてるんです。でもコルク樫はコルク層が異様に発達しているだけで、普通の木にもコルク層っていうのはあるんです」
(カンフル)
「あれはカンフルですね」
「心のカンフル剤とかで言うヤツですか?」
「そう、そのカンフルが取れる木、クスノキです。タイガーバーム(→Wikipedia)ってご存知ですか?」
「聞いたことあります」
「そのタイガーバームの香りの主成分はこのカンフルです。
すごいいい匂い。
ちなみにこのクスノキの葉にはダニ室があるんです」
「ダニ室?」
「ダニを住まわせてるのか、ダニが住んじゃってるのかは僕にはわからないですけど、葉のここがプクって膨れてるのはわかりますか?」
「ここにダニがいます。一応ここに部屋があってダニがお住まいになられている。あっ!やっぱりいい匂いする」
「ダニ室とか言われたら葉っぱを触るのに抵抗が(笑)」
「なんで元気がないとカンフル剤って言われるのかはよくわからないです。
クスノキ科はシナモンとかの仲間で、クスノキは葉っぱにもう1つ特徴があるんです。
葉脈が三行脈という、葉の根本から脈が3つに分かれてるんです」
「なるほどぉ〜」
「公園の管理者さんはクスノキを結構嫌がるって聞いたことがあります」
「常に葉がある常緑樹だから、年がら年中葉が散って掃除が大変なんだって」
「これウラジロガシじゃないかな?まぁいいや、ウラジロガシということで話をすすめますが、葉の裏が白いんです。だからウラジロガシ」
「ウラジロガシ…」
「腎臓結石のおくすりはウラジロガシからとってたりします。葉の裏が白っぽくなってるでしょ?一箇所だけじゃなくて全体的に。だいたいの葉は裏側が白っぽいんだけど、なんででしょう?」
「よ…葉緑素の問題?」
「これは裏面は気孔が多いので、穴が多いから人間には白く見えるんだってさ」
公園内に緑がいっぱいあるのは知ってたけれども、こんなに種類があって、こんなに緑についてしゃべることができるなんてさすが大学の先生!
これだけ知識があると、公園を散歩するのも楽しそうだなぁと思わずにはいられない!
★長尾高校横には蟹草が生えてる
「スターフルーツって熱帯果物(→Wikipedia)もカタバミの仲間なんですが、カタバミは普通こういう草なんです。でもスターフルーツはでっかい木になって実になるからすごいんです。
あ、ホトケノザや!」
「おおおお〜〜!!」
「春の七草ですね」(※溝に生えていたのはホトケノザ(シソ科)で、春の七草に出てくるホトケノザはコオニタビラコ(キク科)でした)
「これは本当のスミレ(もしかしたらノジスミレかも)。ビオラとかパンジーとかの原種です。スミレは閉鎖花(へいさか)といって花を咲かせないで実をつけてます。ここすごいね、植物の宝庫やん。これはイノモトソウやん」
「イノモトソウはシダの仲間ね」
「ここのフェンスはとれないので、掃除がしづらいゆえに植物が多いんですかね」
その後も蓼を見つけたらお枚の方が 「蓼食う虫も好き好き(ことわざ)」の蓼?といった豆知識を披露したりしながら、摂南大学に戻ったところで……
ちなみに摂南大学では5月18日に「2019年度春の薬草見学会」が開催予定!
60名の募集ですが、毎回抽選になる大人気イベントです!
この記事にも出ている伊藤優先生による、年に数回しか入ることができない摂南大学の薬用植物園の見学。子どもに大人気とのことですし、マニアックな知識の片鱗が伺えるかもしれません。興味がある方はぜひ!
それとは少し違うイベントですが「一般人が入れるのは年2回くらい!摂南大学の植物園の見学にいって味覚の不思議体験&いろんな薬草について」の記事も参考にどうぞ!